煎茶、ダージリン、鉄観音、プーアル——お茶の名前は無数にありますが、実はすべてのお茶は同じ植物(チャノキ / Camellia sinensis)から作られています。違いを生むのは製法、なかでも「酸化発酵をどこまで進めるか」。この軸で整理したのが中国茶に由来する六大茶類という分類です。

分類の鍵は「酸化」

茶葉は摘んだ瞬間から、葉の中の酵素によって酸化が始まります。リンゴの切り口が茶色くなるのと同じ現象です。この酸化を——

  • すぐ止めると緑茶に
  • 深く進めると紅茶に
  • 途中で止めると烏龍茶(青茶)に

なります。つまり緑茶と紅茶は対極にある同じ葉、という関係です。

六大茶類の全体地図

分類 酸化度 代表的なお茶
緑茶 不発酵 煎茶、玉露、龍井(ロンジン)
白茶 微発酵 白毫銀針、白牡丹
黄茶 弱後発酵 君山銀針
青茶(烏龍茶) 半発酵 鉄観音、東方美人、凍頂烏龍
紅茶 完全発酵 ダージリン、アッサム、キームン
黒茶 後発酵(微生物) プーアル熟茶

※「発酵」という語が慣用的に使われますが、緑茶〜紅茶の「発酵」は酵素による酸化であり、微生物が関与するのは黒茶だけです。

日本茶はほぼ全部「緑茶」

煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶、玄米茶——日本で飲まれるお茶の大半は、蒸して酸化を止めた不発酵茶=緑茶の仲間です。同じ緑茶でも、中国式は釜で炒って酸化を止めるため(釜炒り)、香ばしい香りになります。蒸しか釜炒りか、という違いは飲み比べるとはっきり分かります。

烏龍茶は「半発酵」のグラデーション

青茶(烏龍茶)は酸化度8〜25%の軽やかなもの(文山包種)から、50〜60%の紅茶寄りのもの(東方美人)まで幅広いグラデーションを持ちます。「烏龍茶」と一括りにせず酸化度の軸で見ると、選ぶ楽しみが一気に広がります。

注意 — 分類は「工程」の区分で、酸化度の実測値ではない

表の「完全発酵」「半発酵」はあくまで製法カテゴリのラベルで、個々のお茶の酸化度がその通りとは限りません。代表例がダージリンのファーストフラッシュ。紅茶の工程(萎凋→揉捻→酸化→乾燥)で作られるので分類上は紅茶ですが、近年は酸化をかなり浅く止める仕上げが主流で、水色は緑茶に近く、酸化度だけ見れば烏龍茶の東方美人より浅いことすらあります。

つまり六大茶類は「どの工程で作られたか」の地図であって、「酸化がどこまで進んだか」の物差しではない——ここを混同しないのが、この分類を使いこなすコツです。

この「工程で分類する」立場は、2023年に発行された国際規格 ISO 20715:2023(Tea — Classification of tea types)でも採用されています。同規格は六大茶類を製造工程で定義し、紅茶の工程の語として aeration・oxidation・fermentation を同じ用語項目に並べ、微生物が関与する後発酵は黒茶の piling に限定しました。慣用の「発酵」「半発酵」で大きくざっくり話すのは便利ですが、正確に語るときは工程の言葉に立ち返る——という使い分けが現在地です。境界上のお茶(ダージリンFF、東方美人、微発酵の白茶など)こそ、飲み比べていちばん面白い領域でもあります。

まとめ — 地図があれば迷わない

新しいお茶に出会ったら、まず「六大茶類のどこに位置するか」を確認してみてください。酸化度という一本の軸の上に置くだけで、味の予想がつき、好みの探索が体系的になります。紅茶に進むなら紅茶の産地入門へ、銘柄ごとの淹れ方は茶葉図鑑へどうぞ。

黒茶の後発酵で味に何が起きるか——碁石茶・阿波晩茶の渋味の実測やプーアル渥堆のポリフェノール変化は、姉妹サイトの苦味研究所(NIGAMI LAB)が出典つきで整理しています。

今後、それぞれの茶類を1本ずつ掘り下げる記事を書いていきます。