Threads の紅茶の質問募集の投稿に、「同じ紅茶でも含有しているカフェインの量が違うと知った(アッサムは多め、など)。実際は一杯あたりでどれぐらい差があるのか」という問いをもらいました。資料を当たった結論を先に書くと、産地ごとに同じ条件で淹れて一杯のカフェインを比べた資料は見つかりませんでした。そのかわり、「産地の差」より大きく動くものが見えてきます。
成分表の「紅茶 30mg」は、6 産地をまとめた値
日本食品標準成分表(八訂)の「紅茶・浸出液」は、茶 5g を熱湯 360mL で 1.5〜4 分浸出したもので、カフェインは 100mL あたり約 30mg(0.03g/100g)です。文部科学省の説明によると、この浸出液の試料は セイロン(ディンブラ)・ダージリン・アッサム・ウバ・ルフナ・ケニア の 6 産地を対象に、2.5 分・4 分・1.5 分で浸出したものでした。つまり 30mg は産地をならした代表値で、産地ごとの数字ではありません。
ちなみに同じ成分表で、玉露の浸出液は 100mL あたり 160mg と紅茶の 5 倍あまりです。これは玉露の葉が特別だからというより、茶 10g を 60mL という少ない湯で淹れるという浸出の条件の違いが大きく効いています(せん茶は茶 10g・湯 430mL で 20mg)。
同じアッサムの中で 2.5 倍
インド・アッサム州の紅茶 32 点(CTC とオーソドックス)を HPLC で測った研究(Sarmah ほか、Foods 2026)では、茶葉 1g あたりのカフェインは 15.51〜39.24mg、平均 30.09mg でした。
| 区分 | 茶葉 1g あたりのカフェイン(平均) |
|---|---|
| アッサム全体(32 点) | 30.09mg(15.51〜39.24mg) |
| アッパー・アッサム(20 点) | 28.40mg |
| ノースバンク(12 点) | 32.91mg |
| アッパー・アッサムのオーソドックス/CTC | 29.84mg/25.05mg |
| ノースバンクのオーソドックス/CTC | 34.58mg/31.24mg |
同じ「アッサム」でも、いちばん少ない茶といちばん多い茶で 2.5 倍の開きがあります。地区や製法(オーソドックスか CTC か)でも平均が数 mg 変わっていました。「アッサム」という産地名だけで、一杯のカフェインが決まるわけではないことが分かります。
「アッサム種は多い」と逆の結果も
茶の木には、中国種(var. sinensis)とアッサム種(var. assamica)という 2 つの変種があります。中国・広東省の同じ場所で育てた 9 品種を比べた研究(Tang ほか、Genes 2022)では、茶葉のカフェインは中国種の 2 群が 3.58〜4.15%、アッサム種の群が 0.05〜0.55% で、アッサム種のほうがずっと少ない結果でした。
ただしこの研究は、1 か所で育てた各群 3 品種だけの比較です。インドのアッサムで商業栽培されている茶にそのまま当てはめることはできません。「アッサム種は多い」「少ない」のどちらかを言い切れる資料は、今回は見つかりませんでした。
一杯あたりに直すと
一杯の量は資料によって違います。
- 日本の成分表の値(100mL あたり 30mg)に 150mL を掛けると 45mg、250mL なら 75mg(成分表自身は「一杯」を決めていないので、これはこちらで掛け算した目安です)
- 欧州食品安全機関(EFSA)の値をまとめた EUFIC の表では、紅茶は 100mL あたり 22mg、一杯 250mL で 55mg としています
同じ「紅茶一杯」でも、どの値を使い、一杯を何 mL と置くかで 45〜75mg ほどの幅が出ます。これに、茶葉の量・湯の量・浸出時間の違いが重なります。
言えること・言えないこと
- 言える: 日本の成分表の紅茶の値は、6 産地をまとめた代表値で、産地別ではない
- 言える: 同じアッサムの中でも、茶葉のカフェインには 2.5 倍の幅がある(32 点の実測)
- 言える: 一杯の量は、成分表の濃度でも「一杯」を何 mL と置くかで 45〜75mg と変わる
- 言えない: 「アッサムは○mg、ダージリンは○mg」という産地ごとの一杯の差。同じ条件で比べた資料が見つからなかった
- 言えない: 「アッサム種はカフェインが多い」。逆の結果の研究もあり、決め手が無い
まとめ
紅茶のカフェインは、産地の名前よりも、同じ産地の中のばらつきと、茶葉の量・湯の量・時間のほうが大きく動かします。コーヒーや緑茶との比べ方はコーヒーと紅茶、カフェインが多いのはどっち?に、紅茶の産地ごとの特徴は紅茶の産地入門にまとめています。
参考文献・データについて
- 文部科学省「日本食品標準成分表」(2020 年版・八訂)16 し好飲料類。紅茶・浸出液(茶 5g/熱湯 360mL、1.5〜4 分、カフェイン 0.03g)、玉露・せん茶の浸出液
- 文部科学省「日本食品標準成分表 2010 について」。紅茶浸出液の試料(6 産地・浸出時間)の説明
- Sarmah PP ほか「Biochemical Quality Profile of Black Tea from Upper Assam and North Bank Region of Assam, India」Foods 15(1)(2026)
- Tang H, Zhang M, Liu J, Cai J「Metabolomic and Transcriptomic Analyses Reveal the Characteristics of Tea Flavonoids and Caffeine Accumulation and Regulation between Chinese Varieties and Assam Varieties」Genes 13(11): 1994(2022)
- EUFIC「Caffeine levels in different foods and drinks」(EFSA NDA Panel, EFSA Journal 13(5): 4102, 2015 の値)
- 調査の記録は
docs/research/sns/2026-09-28_紅茶のカフェインの種類差.md