ORIGIN — COUNTRY / TEA
狭山
狭山茶 / SAYAMA / 埼玉狭山 / 東京狭山茶
埼玉県西部と東京都西部で作られる緑茶。商品名は年・新茶・品種名に、埼玉狭山の産地とほうじ茶・煎茶などの種別が続く。地理的表示は未登録で、地域団体商標が使われる。
百科
位置と産地
産地名の表示には、埼玉県内産と東京都西部産の荒茶だけを使った「狭山茶」、その割合が50%以上100%未満の「狭山茶ブレンド」、東京都で生産された「東京狭山茶」の3つの呼び方がある。
狭山茶は埼玉県の茶で、日本の茶の産地の一つである(2023年8月)。埼玉県内産と埼玉県に隣接する東京都西部地域産の荒茶を100%使用した茶をいい、50%以上100%未満のものは狭山茶ブレンドと表示できる。
狭山茶は、入間市・所沢市・狭山市・飯能市・日高市・鶴ヶ島市・川越市・東松山市・坂戸市・ふじみ野市・三芳町などの埼玉県西部で栽培され、入間市・所沢市・狭山市は生産量が特に多い。埼玉県の茶は、県西部のほか、上尾市・春日部市・新座市・志木市・蓮田市・久喜市・白岡市等の県東部と、秩父市・横瀬町等の秩父山地地方でも栽培されている。東京都で生産された狭山茶は東京狭山茶と呼ばれ、東京での産地は瑞穂町が生産量の多くを占める。
北限の産地と気象
狭山茶を産する埼玉県は、日本の緑茶生産の経済的北限とされる。入間市の武蔵野台地北西部の金子台に広がる茶園は、大規模な茶園としては国内の最北限にあたる。狭山は茶産地として冷涼で冬の間に茶樹が十分に休み、茶葉の厚さが増すとされる。
茶の新芽は霜に弱く、晩春から初夏の晩霜を防ぐため、防霜ファンで地上約6mの暖かい空気を茶畑に吹き下ろす。一番茶の開葉期以後は2℃程度の低温で凍霜害を受けるとされ、近年は4月20日ごろに展葉していることも珍しくない。埼玉県茶業研究所の1994〜2023年の観測と作況データでは、茶の萌芽期が早まり、凍霜害リスクが高まっていた。
幹割れ(裂傷型凍害)は、初冬に定植当年から2年目の幼木の地際に縦方向の裂傷が出る被害で、要因は低温・低温遭遇頻度・土壌水分である。2021年4月植えのやぶきた1年生苗では、2022年5月19日の裂傷発生率が防霜ファン未稼働区でマルチ30.0%・露地3.3%、稼働区はともに0%だった。
生産と経営体
埼玉県の令和6年産の茶の栽培面積は719haで、主産県計35,100haの2.0%を占める。荒茶生産量は838tで、主産県計66,900tの1.3%を占める(2024年)。令和3年産は栽培面積が783haで全国第8位、荒茶生産量は728tで全国第10位だった。令和3年産から6年産にかけて、栽培面積は783haから719haへ減り、荒茶生産量は728tから838tへ増えた。平成30年産の855haから令和4年産の729haへ栽培面積が、898tから729tへ荒茶生産量が減った推移もある。
埼玉県は他の産地より寒冷なため、茶を年2回しか摘まず、順位が下がる。暖かい産地の年3〜5回より少ない。農林業センサスでは、販売目的で茶を栽培する経営体が2015年の666から2020年の406へ、栽培面積が612haから494haへ減った。2020年の茶の経営体と栽培面積は、入間市が172経営体251ha、所沢市が99経営体116ha、狭山市が57経営体56ha、飯能市が18経営体13ha、日高市が14経営体15ha、鶴ヶ島市が11経営体17ha、川越市が7経営体7ha、東京都瑞穂町が23経営体19haである。
品種
埼玉県で栽培される茶の品種は、主にやぶきたとさやまかおりである。全国の栽培面積の8割弱を占めるやぶきたは、埼玉県では茶の栽培面積の65%を占める。狭山茶は主として、やぶきた・さやまかおり・ふくみどりなどの品種で作られる。
埼玉県が育成した茶の品種には、さやまかおり・ふくみどり・ほくめい・むさしかおり・さいのみどり・ゆめわかば・おくはるか・さやまあかりがある。さやまかおり(茶農林31号)は埼玉県茶業研究所が昭和46年(1971年)に育成した。ふくみどり(茶農林36号)は埼玉県茶業試験場が昭和61年(1986年)に育成した、中生で寒さに強い品種である。ほくめい(茶農林43号)は同試験場が平成4年(1992年)に育成した、やや晩生で寒さに強い品種である。さやまあかりは令和3年(2021年)に育成され、さやまかおりより多収でクワシロカイガラムシに抵抗性がある。
摘採と仕上げ
狭山茶の摘採は春夏の年2回で、一番茶が4月下旬〜5月下旬(5月)、二番茶が6月下旬〜7月中旬(7月)である。
火入れは、茶の仕上げ段階で熱を加えて乾燥を十分に行い、貯蔵性を高めるとともに加熱による香気を生成させる工程である。狭山火入れは、狭山茶の仕上げの工程で行われる火入れで、独特の香ばしさが生まれ、甘くて濃厚なお茶になるとされる。高温で火入れして強い火入れ香を出し、茶の外観は白っぽく、水色は澄んだ黄金色になる。仕上げの乾燥の全ての工程に90分ほどかかるとされるが、この時間が火入れだけか製茶全体かは原典に書かれていない。製法の詳しい流れは茶の製法で何が起きているかに書いている。
回転ドラム式火入れ機で煎茶を茶葉表面100・115・130℃で取り出した実験(2015年)では、100℃は香ばしさが弱く、130℃はほうじ茶を連想させる香りになった。煎茶の火入れでは香気寄与成分20種が増え2種が減り、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンなど3種が火入れで生じる主要成分とされた。
制度と組織
「狭山茶」は地域団体商標で、権利者はいるま野農業協同組合、指定商品は狭山丘陵地域を発祥地とする入間市・狭山市・所沢市等と東京都西部産の茶である。農林水産省の地理的表示(GI)登録産品一覧(第179号まで、2026年7月10日時点)に、名称が「狭山茶」の登録は無い。
狭山茶の茶業は、農家が自ら栽培した葉を製茶し、販売までを一貫して行う「自園・自製・自販」の形態が主流とされる。
品評会
第51回関東ブロック茶の共進会(2024年7月25〜26日、茶業研究所で審査)は、出品103点のうち埼玉県が44点、入賞37点のうち埼玉県が16点だった。荒茶(普通煎茶)、荒茶(深蒸し煎茶)、仕上茶(普通煎茶)の3部門で、最優秀賞・金賞・銀賞・銅賞を決める。共進会長は埼玉県知事で、荒茶(普通煎茶)部門などでは最優秀賞に農林水産大臣賞、金賞に関東農政局長賞の特別賞が付く。第75回全国茶品評会の出品茶入札販売会は2021年11月27〜28日に静岡市で開かれ、第75回全国お茶まつり埼玉大会実行委員会が主催した。
歴史
江戸時代中頃には、現在の青梅市・瑞穂町・武蔵村山市・東大和市・東村山市の周辺で狭山茶が大々的に生産されるようになった。18世紀中頃(1750〜1780年頃)に関東地方で茶の安定生産に取り組んだ人々が、今日の狭山茶の元祖とされる。この試みは、「河越茶」復興の気運の高まりと、1738年に確立された煎茶製法を機に始まった。
江戸後期の1819年(文政2年)に、狭山丘陵北麓の製茶技術を広めた生産者が、江戸の茶問屋と取引を始めた。「狭山茶」の名は、狭山丘陵北麓の茶作り復興の地での呼び名で、1832年の復興記念碑(重闢茶場碑)の建立ごろに生まれた。1875年に埼玉県域の製茶業者が輸出会社「狭山会社」を設立し、狭山茶・根通り茶・八王子茶などの茶名を「狭山茶」に統一した。
東京の茶舗の沿革には、狭山(埼玉)で1815年に茶園経営を始め、1875年に日本初の茶直輸出会社「狭山会社」を設立したとあり、これは店側の沿革の説明である。狭山茶の起源を鎌倉時代の高僧による伝来とする話は、近年の調査で史実ではなく、江戸時代に広まった伝説とされる。
買い方の手引き
棚での見え方
2026-10-02 の観測では、産地を狭山とする茶葉は 15 件、扱う店は 5 店です。茶種の欄が緑茶の商品は 13 件で、摘み取りの時期の欄は新茶が 8 件です。等級の欄が付いた商品はありません。100g あたりに換算した価格の中央値は 5,500 円です。店の説明文から取り出せた風味の系統の語はありません。
商品名の型
商品名は「年 + 新茶 + 品種名 + 埼玉狭山 + 種別 + 容器」の順に並ぶ型が見られます。たとえば「2026年 新茶 ふくみどり-埼玉狭山-棒ほうじ茶-茶缶Ver」のように、同じ品種と産地で、棒ほうじ茶・紅ほうじ茶・かぶせ煎茶といった仕上げの違いと、茶缶かパッケージかの容器の違いが別の商品になります。品種名は「ふくみどり」「ごこう」「さやまかおり」が例に出ます。
品種名と商品コードだけの商品名、ほうじ茶のお試しセット、ほうじ茶を使った菓子も同じ産地欄に並びます。産地欄が狭山でも、茶葉そのものか加工品かは商品名で見分ける必要があります。「狭山茶」と書かれていても、次の節のとおり、地理的表示の登録は無く、表記の根拠は商標と産地の定義です。
産地名の読み方
「狭山茶」は埼玉県内産と東京都西部産の荒茶を 100% 使った茶をいい、50% 以上 100% 未満は「狭山茶ブレンド」と表示できます。商品名の「埼玉狭山」は、埼玉県側の産地を指す書き方です。
観測
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観測した商品