茶の種類は、摘んだあとに何をするかで分かれます。この記事は、緑茶・紅茶・烏龍茶・白茶・黄茶・プーアル熟茶を、工程の並びと、各工程で成分に起きることから並べます。
数値はすべて kopi+cha の知識の台帳で原典を確かめた主張から、そのまま載せています。試験の条件(茶の種類・温度・時間)が付いているものは、条件ごと書きます。研究や資料で割れているものは、割れていると書きます。
一枚で並べる
| 茶 | 工程の並び | 酵素が止まる場所 |
|---|---|---|
| 煎茶(緑茶) | 蒸熱 → 揉捻 → 乾燥 | 蒸熱 |
| 釜炒り茶(緑茶) | 釜で炒って殺青 → 揉捻 → 乾燥 | 釜での加熱 |
| 碾茶(抹茶の原料) | 蒸熱 → 揉まずに乾燥 | 蒸熱 |
| 紅茶 | 萎凋 → 揉捻 → 酸化 → 乾燥 | 最後の乾燥(殺青の工程は持たない) |
| 烏龍茶 | 萎凋 → 做青(部分的な酸化)→ 殺青 → 揉捻・成形 → 乾燥 | 殺青 |
| 白茶 | 萎凋 → 乾燥(揉捻や炒りは経ない) | 殺青の工程は無い |
| 黄茶 | 炒って殺青 → 揉捻 → 悶黄 → 乾燥 | 炒る工程 |
| プーアル熟茶 | 渥堆(積んで加水し、微生物で加速発酵)を経る | 台帳では未確認 |
酵素を止める — 殺青
殺青は、茶の生葉に含まれる酸化酵素の活性を加熱で止め、それ以上の酸化が進まないようにする工程です。同時に、水分を減らして葉を柔らかくし、揉捻しやすくして、青臭さを除きます。緑茶は、収穫直後の葉を、日本では蒸熱、中国では釜炒りで加熱して、緑色を保つとされています。
蒸す
煎茶の蒸熱時間は、普通蒸しで 30〜45 秒程度、深蒸しでは 1〜2 分程度とされています。深蒸し煎茶は、同じ工程を時間を長くして行う茶で、普通の煎茶に対する倍率は、資料によって約 2 倍、2 倍以上、2〜3 倍と幅があります。深蒸しでは葉が細かくなり、渋みが減るとされています。
蒸し時間の試験が 2 つあります。
- 蒸熱を 15〜150 秒で変えた試験では、荒茶の外観は蒸熱が長いほど評点が下がりました。内質は、短すぎると若蒸しになり、約 40 秒が適当でした。
- 蒸し時間を 30 秒から 150 秒へ延ばした試験では、クロロフィルのフェオフィチン化が進んで色が黄みを増しました。30 秒では青臭味、150 秒では煮る臭と赤褐色の水色が出ました。
蒸熱のあとの煎茶の工程は、粗揉(熱風で乾かしながら揉む。45 分程度)、揉捻(加圧して揉み、水分を均一にする。加熱せず 20 分程度)、乾燥(約 80℃ の熱風で含水率 5% 程度まで。30 分程度)です。ここまでを終えた茶が荒茶です。
炒る
釜炒りは、蒸す代わりに釜で炒って殺青する方式で、釜炒り茶は勾玉状の形に作ります。香りには、糖とアミノ酸の加熱反応で生じるピラジン類とピロール類が含まれ、被覆栽培の茶の釜炒り茶は、露天栽培の茶より、窒素を含む加熱生成物が多くなりました。露天栽培の釜炒り茶の主要な香気成分として、2-アセチルピロール、マルトール、ベンジルアルコール、インドールなどが挙げられています。
緑茶の殺青で 180℃ を超える高温の処理を行うと、青臭さが減り、カロテノイドや脂肪酸の分解で、ゲラニルアセトンや (Z)-ジャスモンなどの香り成分が生じるとされています。これは釜炒りと明記された主張ではないので、釜の温度としては扱いません。
萎らせる — 萎凋
萎凋は、摘んだ生葉を陰干しにして萎らせる工程で、紅茶・烏龍茶・白茶に含まれます。
紅茶の萎凋では、生葉を棚に薄く広げるか槽に入れ、風を通します。水分は 30〜40% 程度蒸発します。時間は、萎凋棚で 15〜20 時間、工場の萎凋槽では 8〜10 時間です。スリランカのオーソドックス製法では 18〜24 時間かけます。インド北東部の CTC 製法の試験では、厚さ約 2 cm に広げ、室温で 16〜18 時間萎凋させ、水分を 76〜78% から 68〜70% に下げました。
萎凋中には、水分の減少、細胞膜の透過性の上昇、揮発性の香り成分の生成など、多くの変化が起こります。
- 生葉の複雑な成分が、揮発性の香り成分・単糖・アミノ酸に分解され、脂質も分解し、カテキンの量は低下するとされています。
- CTC 紅茶の製造中にカフェイン含量が生葉の 1.09〜1.27 倍に増え、増加は萎凋の段階で目立ちました。
- 中国の紅茶の試験では、揮発性成分が 165 種同定され、β-イオノンなどカロテノイドの分解に由来する成分や、脂肪酸に由来する成分が、萎凋中に増えました。
白茶は、萎凋と乾燥の 2 つの工程だけで作られます。乾燥は、天日で乾かしたあと、焙籠に紙を敷いた弱火 40〜50℃ で補助的に行います。萎凋の方法を比べた試験では、室温 20℃ の萎凋が 40 時間かかったのに対し、28℃ の熱風萎凋は 23 時間、日光萎凋は 28 時間でした。同じ試験で、加熱萎凋(特に熱風)の白茶は、室温萎凋より、有機酸・アミノ酸・フラボノイド・カテキンの濃度が高くなりました。
台湾での白茶の説明は、長時間の萎凋ののち烘菁と軽い揉捻を経て乾燥し、発酵度は約 10% とされています。揉捻を経ないとする説明と食い違っており、ここは資料で割れています。
揉む — 揉捻と CTC
紅茶の揉捻は、茶葉の組織の細胞を壊して酸化酵素の働きを進みやすくし、あわせて葉の形を整える工程とされています。スリランカでは、機械で葉の細胞を破って酵素を空気に触れさせ、酸化を始め、できた塊をほぐしてふるいます。揉捻中に葉の温度が華氏 82 度(摂氏約 28 度)を超えると、タンニンの縮合が進み、茶湯の色と味が損なわれるとされています。
煎茶の揉捻は加熱せず水分を均一にする工程で、紅茶の揉捻は酸化を始める工程です。
CTC は、切断・引き裂き・丸めの機械で、萎凋した葉を細かく砕く方法です。スリランカでは、ティーバッグ向けの茶が、従来の揉捻でなく CTC で作られます。CTC 紅茶は、オーソドックス紅茶より、テアフラビン類・テアルビジン類の含量が高いと報告されています。
酸化させる — カテキンからテアフラビンとテアルビジンへ
紅茶は、萎凋・揉捻・酸化・乾燥で作られ、殺青の工程を持たない茶です。ISO 20715:2023 では、酸化工程の語として aeration・oxidation・fermentation が同じ用語項目に並びます。
酸化発酵は、カテキン類を基質に、内在する酵素(ポリフェノールオキシダーゼとペルオキシダーゼ)がカテキン類を酸化・二量化させる反応で、カテキン類が酸化的に結合してテアフラビン類ができるとされています。発酵室の条件は、20〜25℃・湿度 90% 近くで 2〜4 時間置くもので、葉は緑色から赤褐色に変わります。別の資料では、20〜30℃ で 30〜120 分行い、25℃・60 分を最適とする報告があります。
テアフラビンは、できたあとさらに変わります。CTC 紅茶の試験では、総テアフラビン量は発酵 20 分で最大になり、40 分には 13〜36% 減りました。一部がテアルビジンへ酸化するためとされています。
浸出液では、テアフラビン類が水色の明るさと味の切れ(ブリスクネス)を、テアルビジン類が味と橙褐色を与えるとされています。テアフラビン類は成分全体の 2〜6% 程度、テアルビジン量とテアフラビン量の比(TR/TF)は、十分に発酵した茶で 8〜10 程度です。
酸化のあとは、100℃ 前後の熱風で水分 3〜4% になるまで乾燥し、酵素の働きを止めます。スリランカでは 99〜104℃ の火入れ室で乾燥します。
烏龍茶 — 做青と焙煎
ISO 20715:2023 は、烏龍茶と青茶を同義とし、工程を、萎凋 → 做青と部分的な酸化 → 殺青 → 揉捻・成形 → 乾燥と定義しています。紅茶が殺青を持たないのに対し、烏龍茶は酸化の途中で殺青をします。
做青の説明として、台湾の部分発酵茶では、攪拌(浪菁)の初期に茶菁の水分を再分配し、のち葉の細胞を摩擦で傷めて、ポリフェノールオキシダーゼとカテキンの反応を増やし、発酵の程度を調節します。別の解説では、紅茶は細胞を壊してから酵素を働かせ、烏龍茶は細胞を壊さずに酵素を働かせる点で製法が異なるとされます。「壊す」と「傷める」の範囲は、資料によって書き方が違います。
台湾の烏龍茶の発酵(酸化)度は、次のとおりです。
| 茶 | 発酵(酸化)度 |
|---|---|
| 包種茶・高山烏龍 | 8〜25% |
| 凍頂烏龍 | 25〜30% |
| 鉄観音 | 約 40% |
| 東方美人 | 50〜60% |
高山烏龍茶の製造条件の試験では、萎凋方法・揺青の強さ・静置時間のうち、官能評価点への影響が最も大きかったのは揺青の強さで、静置時間は小さくなりました。
焙煎(烘焙)は、水分を除いて貯蔵性を高め、荒製の茶の青臭さや雑味を改善して、茶の特有の香りを増す工程です。武夷岩茶・肉桂の研究では、110〜115℃ で 1 時間焙煎したのち、同温で 16 時間の焙煎を 3 回重ね、各段階の成分を比べました。烏龍茶 153 試料の比較では、焙煎茶は未焙煎茶より揮発性成分の種類が大きく増え、官能ではカラメル様・辛味の評点が高くなりました。
黄茶 — 閉じ込めて黄変させる
黄茶は、茶菁を炒って殺青し、揉捻したのち、悶黄(閉じ込めて黄変させる)を経て乾燥します。台湾の分類では不発酵茶に入ります。
平陽黄湯茶の密閉黄変の試験では、60℃・相対湿度 70%・10 時間(換気 2 回)で総合の官能評点が高く、クロロフィルの分解と、没食子酸型カテキンの減少が伴いました。密閉黄変の時間を延ばすと、まろやかな味と甘い香りは頂点まで増したあと、香りの過度の酸化と味の過度の変化で低下するとされています。
積んで微生物に働かせる — 渥堆
プーアル茶には、毛茶を固めて自然に発酵させる生茶と、渥堆という加速発酵の工程を経て作る熟茶があります。製法による中国茶の六大分類では黒茶に入ります(dark tea が黒茶で、black tea は紅茶です)。渥堆は、1973 年ごろに雲南省の昆明茶廠で開発されたとされています。
工程の数字は資料によって幅があります。
- 茶葉を高さ約 1 m に積み上げて加水し、撹拌を挟みながら約 50〜66 日ほど発酵させる。堆積層は温度約 30〜60℃、pH 4〜5 で推移する。
- 熟茶の渥堆の全工程は通常 45〜60 日で、堆の中心温度が 60℃ に達したら切り返しを行う。
微生物では、Aspergillus 属などの真菌が関わり、Aspergillus niger がアミノ酸代謝を活性化して風味の形成に関与すると報告されています。別の研究では、細菌は Pantoea と Bacillus、真菌は Aspergillus と Thermomyces が優占し、真菌の多様性は急減ののち安定しました。
成分では、生茶と比べ、熟茶では主要なカテキン(C・EC・ECG・EGC・EGCG・GCG)・遊離アミノ酸・可溶性糖が有意に少なく、テアフラビン・テアルビジン・テアブラウニンが有意に多くなりました。没食子酸は、発酵 40 日目まで有意に増加し、その後有意に減少すると報告されています。
日光を遮る — 被覆栽培と碾茶
玉露などの被覆栽培は、日光を遮ることで、アミノ酸からカテキンへの生成を抑え、渋みの少ない味わいにするとされています。玉露は約 20 日間、かぶせ茶は約 7 日間、茶園を覆います。
- 遮光率 75% 以上で 20 日間被覆した試験では、新芽のテアニン含有量が、無遮光の茶より多くなりました。遮光率が高い条件ほど新芽のエピガロカテキン含有量は少なく、その差は被覆期間が長いほど大きくなりました。
- 日光下では、茶葉のテアニンがグルタミン酸とエチルアミンに代謝され、エチルアミンの炭素が主にカテキンへ変わります。被覆は、テアニンの分解とカテキンの合成を抑えます。
- 被覆栽培ではクロロフィル含量が増え、碾茶・抹茶の葉は濃い緑色になります。
碾茶は、2〜3 週間程度覆う覆下茶園の葉から作ります。被覆期間は資料で割れています。2〜3 週間程度とする基準は玉露の 20 日程度と重なりますが、玉露の 20 日前後より長いとする資料もあります。
碾茶は、揉捻を経ず、蒸熱の後そのまま乾燥させる点で煎茶と異なります。専用の碾茶乾燥機で、高温の熱風により急速に乾燥させます。乾燥機が高価なため、煎茶用の機械で乾燥した葉も抹茶の原料に使われるとされています。出荷の直前に挽いて微粉末にすると抹茶になります。
火を入れる — 火入れとほうじ茶
荒茶(水分 5% 程度)は、形が不均一で水分も多く長く貯蔵できないため、仕上げ加工を経ます。最終の火入れで水分 2〜3% まで加熱乾燥され、青臭さと貯蔵中の変質臭が減り、糖とアミノ酸の加熱反応でピラジン・ピロール・フランの化合物が生じて、火入れ香になります。
ほうじ茶は、煎茶や番茶を強火で焙じた茶です。焙煎温度は、資料によって、摂氏 250 度前後とするものと、160〜180℃ とするものがあります。メイラード反応で生じる香気成分とメラノイジンが、ほうじ茶の特徴を形成します。焙じた緑茶の香気には、ピラジン類・ピロール類・フラン類・ピラン類が多く含まれます。
緑茶を浅炒り(120〜130℃・10 分)と中炒り(140〜150℃・12 分)で焙じた試験では、フルフラールなどのフラン類は、浅炒りで初めて生じ、中炒りで比率が上がりました。
淹れる湯温と成分
煎茶について、次のことが確かめられています。
- 上級煎茶は 70℃ 程度の湯で約 2 分、並級煎茶は 90℃ 程度の湯で 1 分浸出する方法があります。低温ではカテキンの溶出が抑えられ、アミノ酸は低温でも溶出します。
- カフェインは熱水によく溶け、高温の湯で淹れた茶は苦味が強くなります。
- 一番茶 6 g を 90℃ の湯 260 mL で浸出した試験では、カフェイン・テアニン・アルギニンは 1.5 分で 50% を超えて出ましたが、EGCG の浸出率は約 30% でした。
香り成分
- 日本の緑茶 4 種の浸出液は、いずれも、インドール、ピリジン、リナロール、ゲラニオール、ベンジルアルコール、2-フェニルエタノール、マルトールを多く含みました。花様の香りはリナロール、ゲラニオール、β-イオノンなどに、栗様の香りはインドール、cis-3-ヘキセノール、ヘキサナールなどに由来するとされています。
- 中国の紅茶 3 種(金駿眉・キームン・滇紅)では、においの成分 70 種のうち 39 種(リナロール、ゲラニオールなど)が、香りへの寄与が大きいものでした。サリチル酸メチルと花香成分 10 組の知覚の相互作用を調べると、5 組でマスキング、1 組で相加、4 組で相乗の効果がみられました。
- 広東北部の紅茶の春・夏・秋の比較では、香りの主要成分はゲラニオール・サリチル酸メチル・リナロールなどで、アミノ酸は春茶に、フラボノイドは夏秋茶に多くなりました。
まだ確かめられていないこと
- 釜炒りの釜の温度と時間。 釜炒りが蒸熱と別の殺青の方式であることは確かめられましたが、釜の温度と炒る時間は、台帳で確かめられませんでした。
- 碾茶炉の温度。 高温の熱風で急速に乾燥することは確かめられましたが、温度の数字は確かめられませんでした。
- ダージリンのマスカテルの成分。 どの成分が作っているかは、台帳で確かめられませんでした。
- プーアル熟茶の渥堆の前後の工程。 渥堆の条件と成分の変化は確かめられましたが、前後の工程を並べた主張は使えませんでした。
自分で確かめるときは
工程で整理すると、酵素を加熱で先に止めれば緑茶、萎らせて揉み、酸化させてから乾かせば紅茶、酸化の途中で殺青すれば烏龍茶、萎凋と乾燥だけなら白茶、積んで微生物に働かせれば熟茶です。同じ茶葉で湯温だけを変えて飲み比べると、条件を揃えやすくなります。煎茶なら 70℃ 程度と 90℃ 程度で比べ、上の試験の傾向が自分の舌で分かるかを見ます。
茶の審査の違いは「コーヒーのカッピングと茶の審査はどう違うか」に、ミルクを入れる飲み方は「ミルクで煮出すチャイを研究で読む」にまとめています。