コーヒー豆の袋の「カッピングスコア 87 点」、茶の缶の「全国茶品評会 入賞」、台湾の烏龍茶の「頭等」。どれも誰かが決まった手順で味を見て付けた印ですが、手順も、見る項目も、決めているものもそれぞれ違います。この記事では、コーヒーと茶のテイスティングの方法を、規格や審査要領に書かれた数値で並べます。数値はすべて kopi+cha の知識の台帳で原典を確かめたものです。
一枚で並べる
| 方法 | 試料と湯 | 湯と時間 | 見る項目 | 何を決めるか |
|---|---|---|---|---|
| SCA のカッピング(SCA-102-2024) | 湯 150 mL あたり豆 8.25 g(±0.2 g) | 93±3 ℃。注いで 3〜5 分おき、表面の粉の層を崩す | CVA の 4 つの評価(物理・記述・感情・外在) | 知覚した品質を点にし、サンプル同士を比べる |
| COE(カップ・オブ・エクセレンス) | カッピングで審査 | 国内審査 3 ラウンド+国際審査 3 ラウンド | 点と順位 | 入賞と順位(オークションに出るロット) |
| ISO 3103(茶の官能評価用の淹れ方) | 湯 100 mL あたり茶 2 g | 沸騰水。葉の形の茶 5 分、細片の茶 3 分 | 液と浸出後の葉 | 比べるための淹れ方を揃える |
| インド・スリランカのティーテイスター | 1 回に数百の見本を扱うことがある | — | 乾いた葉・浸出後の葉・液の 3 群の評語 | 評語と評価額(オークションの目安)、等級の確認 |
| 日本茶の審査(全国茶品評会の方法) | 香気は茶葉 3 g を審査茶碗に | 熱湯。水色と滋味は普通煎茶 5 分・玉露 6 分 | 外観・香気・水色・滋味の 4 項目(200 点満点) | 品評会の点と順位 |
| 中国の GB/T 23776-2018 | 茶と湯を 1:50(3 g か 5 g) | 沸騰水。緑茶 4 分、紅茶・黄茶・白茶 5 分、烏龍茶 5〜6 分 | 外形・湯色・香気・滋味・葉底の 5 因子 | 級別の判定・合格の判定・百分制の品質評定 |
| 台湾の茶の評鑑(茶業改良場の方法) | 150 mL の審茶杯に茶 3 g | 沸騰水。条型の茶 5 分、白毫烏龍 5.5 分、球型の茶 6 分 | 外観の色沢・水色・香気・滋味・葉底 | 入等と等級(等級ごとに包装して販売) |
コーヒー: 点で比べるための手順
SCA のカッピングは、規約の目的が「カッパーが知覚する品質を判定し、得た点でサンプル同士を比べられるようにすること」と書かれた手順です(2015 年改訂の SCAA 規約)。2024 年の規格 SCA-102 では、カップを縁まで満たす水の重さで容量を測り、150 mL あたり 8.25 g の豆を量ります。湯は 93±3 ℃ で縁まで注ぎ、表面にできる粉の層(クラスト)を 3〜5 分そのままにしてから、約 3 回かき混ぜて崩します。卓の全カップを崩してから、浮いた粉と油をすくい取ります。
焙煎にも決まりがあります。焙煎が速すぎる・遅すぎる(未発達・焦げ・ベイクド)バッチや、カッピング用の焙煎度に入らないバッチは使わず、焙煎し直すと定められています。水は塩素を含まず、カルシウム硬度 50〜175 ppm(CaCO3 換算)、pH 6〜8 が許容の範囲です。
SCA-102 は、この手順を風味の特性をじっくり探るためのものと位置づけ、多数のサンプルを短時間で見る品質管理のカッピングは範囲の外としています。点の付け方は 2024 年に CVA(コーヒー・バリュー・アセスメント)へ移り、物理・記述・感情・外在の 4 つの評価を組み合わせる形になりました。
品評会の COE はこのカッピングを何段も重ねます。第 1 ラウンドでは国内審査員が全サンプルを 1 回ずつカッピングし、86 点以上のものが最大 150 点まで次へ進みます。第 2・第 3 ラウンドで最大 90 点、最大 40 点に絞り、国際審査では第 5 ラウンドに 87 点を超える最大 30 点、第 6 ラウンドで上位 10 点の最終の点と順位を決めます。第 1 ラウンドを通った生産者はロットの全量を、独立した監査会社が管理する保税倉庫へ移し、以降はそこで抜き直したサンプルで審査されます。
紅茶: 淹れ方を揃える規格と、値を付ける人
ISO 3103:2019 は、味の良し悪しを決める規格ではなく、比べるための淹れ方を揃える規格です。湯 100 mL あたり茶 2 g を沸騰水で淹れ、浸出は葉の形の茶で 5 分、細片(ファニングス)の茶で 3 分です。緑茶も同じ量で淹れます。浸出後は蓋で葉を押さえたまま、ポットの縁から白磁のボウルへ液を注ぎ、葉は逆さにした蓋に移して見ます。牛乳を加える淹れ方は紅茶に限られ、大きいボウルに約 5 mL 入れます。比べる試験では、茶の量・水の量と種類・器の寸法・浸出時間・牛乳の量と種類を同じに保ち、水は茶を飲む地域の飲料水に近いものを使います。
産地のオークションでは、ティーテイスターが値を付けます。インドのジョルハット・オークションの規則では、茶業局が承認したテイスターが茶を試飲し、乾いた葉・浸出後の葉・液の 3 項目の評語を最終のカタログに載せ、評価額を下限と上限の幅で出します。売り手はこの幅を目安に、競売の前に価格の条件を決めます。テイスターは、茶が茶業局の指針どおりに等級づけされているかも確かめます。スリランカ茶業局の用語集は、評語を乾いた葉(Black・Bold・Wiry など)、浸出後の葉(Bright・Coppery・Dull など)、液(Body・Brisk・Coarse など)の 3 群に分けています。
日本茶: 外観と内質を減点法で見る
日本茶の審査は、外観・香気・水色・滋味の 4 項目で見ます。外観は黒い審査盆に茶を載せて形と色つやを見て、香気・水色・滋味の 3 項目は湯を注いでから見るので「内質」とまとめて呼ばれます。全国茶品評会の方法では、香気は茶葉 3 g を審査茶碗に入れて熱湯を注ぎ、すくい網で茶葉を持ち上げて嗅ぎます。水色と滋味は網のカップに熱湯を注ぎ、普通煎茶で 5 分、玉露で 6 分おきます。審査用の水は事前に pH と硬度を測って公表し、沸騰後の加熱時間も 3〜5 分程度に揃えます。
点の付け方は、理想的な茶を満点とし、欠点に当てはまるものを下げる減点法で、最終の点は審査員の合議で決めます。配点は茶の種類で違います。
| 茶の種類 | 香気 | 水色 | 滋味 | 外観 |
|---|---|---|---|---|
| 普通煎茶 | 75 | 30 | 75 | 20 |
| 深蒸し煎茶 | 70 | 30 | 80 | 20 |
| かぶせ茶 | 70 | 30 | 70 | 30 |
| 玉露 | 65 | 30 | 65 | 40 |
どれも 200 点満点です。玉露は外観の配点が大きく、深蒸し煎茶は滋味の配点が大きくなっています。多くの品評会は、外観の点が高い順に並べ替えてから内質を見ます。点数の多い審査を能率よく進めるための順序です。
日本茶の官能検査は茶市場の商取引から発達し、それをさらに厳密にした基準が品評会の審査方法になったとされます。全国茶品評会は 1947 年に静岡で第 1 回が開かれ、2024 年の第 78 回は 7 茶種 8 部門、2026 年の第 80 回は佐賀県嬉野市で 8 部門に 814 点が出品されました。1 等から 3 等が入賞で、上位 3 点の合計得点が最も高い市町村には産地賞が贈られます。
中国茶: 因子ごとの点に係数を掛ける
中国の国家規格 GB/T 23776-2018「茶叶感官审评方法」は、茶と湯を 1:50 で淹れます。茶 3.0 g か 5.0 g を白磁の杯に入れて沸騰水を満たし、蓋をして時間を計ります。浸出は緑茶 4 分、紅茶・黄茶・白茶 5 分、烏龍茶は形によって 5 分か 6 分です。烏龍茶には蓋碗の方法もあり、茶 5.0 g を 110 mL の杯で 3 回淹れ、2 分・3 分・5 分で液を取り出します(茶と湯は約 1:22)。
評価する因子は、外形・湯色・香気・滋味・葉底(浸出後の葉)の 5 つです。内質は湯色・香気・滋味・葉底の順に見て、滋味は茶匙で約 5 mL を口に含み、約 50 ℃ の茶湯で見ます。品質の評定は、5 因子にそれぞれ百分制で点を付け、因子ごとの係数を掛けて足し合わせます。係数は茶の種類で違い、2018 年版では緊圧茶の重みが外形 20・湯色 10・香気 30・滋味 35・葉底 5 % に改められました。結果の判定には、標準のサンプルに照らして級を決める判定、取引のサンプルとの差を 7 段階で見る判定、百分制で順位を付ける評定の 3 つがあります。
台湾茶: 杯を押して上下を示す
台湾の茶業改良場の方法は、ISO 3103 に準じた 150 mL の白磁の審茶杯と 200 mL の審茶碗を使い、茶 3 g を沸騰水で淹れます。浸出は条型の茶 5 分、白毫烏龍 5.5 分、球型の茶 6 分です。審査では、碗を基準に杯を前に押すほど品質が上、後ろに押すほど下を示し、杯の蓋を裏返すと外すという、その場の記号を使います。
凍頂烏龍茶の産地、鹿谷郷農会の冬茶の評鑑では、2024 年に 4,724 件の応募から約 16 % が入等しました。最上位は特等獎 1 名と頭等の 10 名で、そのあと頭等獎・貳等獎・參等獎・三朵梅・二朵梅と続くとされます。入等した茶は等級ごとに包装して販売されます。2024 年の冬には、茶業改良場の評鑑の制度(TAGs)で、評審の入力から評鑑の報告書をすぐに出す仕組みが初めて使われました。
比べてわかる違い
試料と湯の比が違う。 カッピングは湯 150 mL に豆 8.25 g で、湯に対しておよそ 1:18 です。ISO 3103、GB/T 23776、台湾の方法は湯に対して茶が 1:50 で、烏龍茶の蓋碗だけが約 1:22 と濃い淹れ方です。
湯の温度が違う。 カッピングは 93±3 ℃ と幅を決め、茶の審査はどれも沸騰水か熱湯です。中国の規格は、味を見るときの茶湯の温度(約 50 ℃)まで書いています。
水の決め方が違う。 SCA は硬度・アルカリ度・pH の範囲で水を決め、ISO 3103 は茶を飲む地域の飲料水に近い水を使い、日本茶の審査は使う水の pH と硬度を測って公表し、中国の規格は飲用水の衛生標準に合わせます。
決めるものが違う。 カッピングは点でサンプルを比べるための手順、ISO 3103 は淹れ方を揃える規格、ティーテイスターは評語と評価額を出す仕事、日本茶と台湾茶の審査は品評会の順位と等級、中国の規格は級の判定と品質の評定です。
なお、日本の闘茶(茶かぶき)は、飲み分けた茶の産地や種類を言い当てた数を競う遊びで、品質の順位を付ける審査とは競う対象が違います。
表示を読むときの目安
- 「カッピングスコア」: どの手順で付けた点かを見ます。COE で入賞するには、国際審査で 87 点以上が要ります。2024 年に SCA の点の付け方は CVA に移ったので、点の年も手がかりになります。スペシャルティコーヒーの定義もあわせてどうぞ
- 「全国茶品評会 入賞」: 1 等から 3 等までが入賞です。「産地賞」は個々の茶ではなく市町村に贈られる賞です
- 台湾の「特等」「頭等」: 農会などの評鑑の等級で、入等は応募のおよそ 16 % です。どの農会の、何年のどの季節の評鑑かで中身が変わります
- 紅茶の評語(Brisk・Bright など): 産地のテイスターが使う決まった言葉です。スリランカ茶業局は Body を厚みと力があること、Brisk を製造から生じる「生きた」特性と説明しています。紅茶の等級は、これとは別に葉の大きさと形の区分です