Threads の紅茶の質問募集の投稿に、「和紅茶の生産量を推定できますか」という問いをもらいました。コピチャが数えているのは店の棚に並ぶ銘柄と値段なので、棚の数から生産量は出せません。そこで国の統計を当たりました。結論から言うと、国の統計には 2006 年までの数字があり、それ以降は載っていません。
国の統計 — 作物統計の「荒茶生産量_紅茶」
農林水産省の作物統計には、荒茶(仕上げ前の茶)の生産量を茶の種類ごとに分けた全国累年表があり、その中に「紅茶」の列があります。1926 年(昭和元年産)から 2016 年(平成 28 年産)まで並んでいます。
| 年 | 紅茶の荒茶生産量 | 荒茶全体 | 紅茶の割合 |
|---|---|---|---|
| 1926 | 22.4 t | 35,225 t | 0.06% |
| 1937 | 4,634.6 t | 53,913 t | 8.6% |
| 1955 | 8,525.2 t | 72,854 t | 11.7% |
| 1956 | 656.1 t | 70,747 t | 0.9% |
| 1970 | 253.8 t | 91,198 t | 0.28% |
| 1971 | 23.0 t | 92,911 t | 0.02% |
| 1976 | 1.0 t | 100,098 t | 0.001% |
| 2003 | 23 t | 91,900 t | 0.03% |
| 2006 | 15 t | 91,800 t | 0.02% |
| 2007〜2016 | (数字なし) | 79,500〜95,500 t | — |
(割合は表の 2 列を割ったもの。全年の数字は調査の記録の CSV に写しています)
読み取れることは 3 つです。
- 頂点は 1955 年の 8,525 トンで、この年は荒茶全体の 1 割あまりが紅茶でした。ただし翌年は 656 トンと、年によって大きく振れています
- 1970 年の 254 トンが、1971 年に 23 トンへ落ちます。日本紅茶協会は、紅茶の輸入が自由化された 1971 年以降、日本で売られる紅茶は輸入品に切り替わったとしています。それ以前の国産紅茶は、主に輸出品として作られていました
- 1970 年代後半から 1990 年代前半は、1977 年の 26 トンを除いて 0〜5 トンの年が続き、2000 年代に入って 15〜23 トンまで戻ったところで、2007 年からは表に数字が載っていません(記号「…」)
2007 年からあと — 県の発表でしか分からない
国の累年表から数字が消えたあとの全国の生産量は、公的な統計では見つかりませんでした。手がかりは県の団体の発表です。
- 一般社団法人鹿児島県茶生産協会は、県内の紅茶の生産量について「令和 7 年度は 158t で全国 1 位」としています(協会のページには、この数字の出典の表記はありません)
鹿児島県だけで 158 トンで、それが全国 1 位なら、全国ではそれ以上になります。国の統計の最後の 2006 年(15 トン)と比べると 10 倍以上ですが、集計した人も方法も違う数字どうしなので、そのまま増え方としては読めません。ネット上には「全国で約 120 トン」という数字も出回っていますが、誰がどう集計したかまではたどれませんでした。
比べる相手 — 輸入量と、緑茶
- 紅茶の輸入量は、日本紅茶協会の確定値で 2024 年 15,039 トン(2020〜2024 年は 13,704〜17,627 トン)
- 荒茶全体は、作物統計の最後の年(2016 年)で 80,200 トン
鹿児島の 158 トンを輸入量 15,039 トンと並べると、およそ 1%。全国の合計が分からないので、和紅茶は「輸入紅茶の数 % 以下」というけたで捉えるのが、いま言える範囲です。
紅茶のために作られた品種
和紅茶には、緑茶用の品種で作ったものと、紅茶用に育成された品種で作ったものがあります。紅茶用の品種の代表が「べにふうき」です。農研機構によると、1965 年に農林省茶業試験場(枕崎)で、アッサム雑種の紅茶品種「べにほまれ」を母、ダージリン系の「枕Cd86」を父として交配し、1993 年に命名登録(品種登録は 1995 年)された、紅茶用・半発酵茶用の品種(茶農林 44 号)です。いまは鹿児島県が中心的な産地だとされています。
国内の棚の和紅茶
コピチャが観測している紅茶 1,274 銘柄・220 店(2026-09-28 時点)のうち、商品名から和紅茶と読めるもの(「和紅茶」「国産紅茶」の語か、日本の茶産地の名前がある紅茶)は 36 銘柄・22 店、紅茶全体の 3% ほどでした。商品名に産地があるものでは、鹿児島 6・静岡 5・宮崎 4・嬉野 2 の順です。値段は、2 店の品ぞろえで半分以上を占めていて比べられる状態ではないので、ここでは出していません。
言えること・言えないこと
- 言える: 国の統計では、紅茶の荒茶生産量は 1955 年の 8,525 トンが最多で、1971 年に 23 トン、2006 年に 15 トン。2007 年からは表に数字が無い
- 言える: 鹿児島県茶生産協会は、県内だけで令和 7 年度 158 トン(全国 1 位)と発表している
- 言えない: いまの全国の生産量。公的な集計が見つからず、県ごとの発表を足し合わせる材料も無い
- 言えない: 2006 年の 15 トンから 158 トンへの「増え方」。数字の出どころが違う
まとめ
和紅茶の生産量は、国の統計では 2006 年の 15 トンで途切れています。戦後の輸出期に 8,525 トンまで作られ、輸入の自由化で数トンまで細り、いまは鹿児島県だけで 158 トンという県の団体の発表がある——というのが、資料でたどれる流れです。紅茶の産地の見取り図は紅茶の産地入門に、日本の茶産地は日本の茶産地マップにまとめています。
参考文献・データについて
- 農林水産省「作物統計調査 平成 28 年産 全国累年統計表 6 工芸農作物 茶 荒茶生産量」(e-Stat、2018-02-23 公開)。表の「荒茶生産量_紅茶【t】」と「荒茶生産量_計【t】」の列
- 日本紅茶協会「紅茶の歴史」(1971 年の輸入自由化、輸出品としての国産紅茶)
- 日本紅茶協会「紅茶輸入量・金額 確定値」(2020〜2024 年)
- 一般社団法人鹿児島県茶生産協会「鹿児島茶業について」(令和 7 年度 158t・全国 1 位)
- 農研機構 野菜茶業研究所「幻のお茶といわれた「べにふうき」」(交配の年と親、茶農林 44 号の登録)
- 棚の数字は
scripts/wakocha-stats.mjs(catalog 2026-09-28)。統計の全年の写しと調査の記録はdocs/research/sns/2026-09-28_作物統計_荒茶生産量_紅茶.csv・docs/research/sns/2026-09-28_和紅茶の生産量.md