ORIGIN — COUNTRY / TEA

ネパール

NEPAL

ネパール東部の丘陵で作られる紅茶の産地。平地ジャパのCTC製法と、イラムなど山地のオーソドックス製法に分かれ、輸出の大半がインドへ向かう。かつてはダージリン紅茶として扱われた歴史があり、2018年に独自の認証商標が作られた。

事実

事実出典階層
政府は1982年、ジャパ・イラム・パンチタール・ダンクタ・テラトゥムの5県を「ティーゾーン」として公式に指定し、小規模農家の茶栽培を奨励したen.wikipedia.orgL3
ジャパ地区は平地でCTC製法の紅茶の主産地とされ、イラム・パンチタール・ダンクタ・テラトゥムの4地区は山地でオーソドックス製法の紅茶を作るとされるteaandcoffee.netL3
オーソドックス製法の紅茶は標高約900〜2,100m(3,000〜7,000フィート)の山地で栽培・製造されるとされるen.wikipedia.orgL3
イラム地区の茶園標高は1,370〜1,520m前後と紹介されるが、この数値は日本語ECサイトの記述によるもので未確認linktea.jpL4
伝統的な5地区の外にも、カスキ・ドラカ・カブレ・シンドゥパルチョク・ボジプル・ソルクンブ・ヌワコットなどで茶栽培が広がっているとされるen.wikipedia.orgL3
イラムでは、ダージリンで茶産業が始まった約10年後の1863年に最初の茶園が開かれ、地理的な近接と気候の類似からダージリン茶に似た性質を持つとされるen.wikipedia.orgL3
生産量は1999-2000年度の5,085トンから2016-17年度には約5倍の24,409トンに増加したと報じられているteaandcoffee.netL3
2016-17年度の内訳はCTC製法が18,547トン(76%)でジャパ地区のみで生産され、オーソドックス製法は5,862トン(24%)で、うちイラムが4,885トン(83.3%)を占めたと報じられているteaandcoffee.netL3
同年度のヘクタール当たり収量はオーソドックス製法が334kg、CTC製法が1,598kgと報じられているteaandcoffee.netL3
同年度、15,103戸の小規模農家が茶園面積の46%にあたる約12,956haで栽培し、国内生産の41%を占めたと報じられているteaandcoffee.netL3
政府統計を報道が引くところでは、2022-23年度のオーソドックス紅茶の輸出額はインド向けが大半を占め、第三国向けは11.4%にとどまったとされるkathmandupost.comL3
同年度、有機認証を受けたオーソドックス紅茶の輸出はインド向け523トン、第三国向け179トンで、第三国輸出に占める有機認証茶の比率は21.63%だったと報じられているkathmandupost.comL3
政府統計を報道が引くところでは、同年度の1kg当たり価格は国内価格941.60ルピー、国際市場価格801.51ルピーだったとされるkathmandupost.comL3
同年度の第三国向け輸出先には日本・中国・米国・フランス・ドイツ・デンマークが挙げられているkathmandupost.comL3
共同マーケティング・輸出を担う業界団体ヒマラヤ紅茶生産者協同組合(HIMCOOP)は2003年に設立されたen.wikipedia.orgL3
2006年時点で、オーソドックス紅茶を生産する小規模農家は約20,000人とされ、当時オーソドックス紅茶生産の70%を小規模農家が担っていたとされるen.wikipedia.orgL3
オーソドックス製法には中国種(C. sinensis var. sinensis)が、CTC製法にはアッサム種(C. sinensis var. assamica)が主に使われるとされるen.wikipedia.orgL3
等級記号は葉の大きさと芯芽(ティップ)の量を示す分類で、味の格付けではない(ダージリン・アッサムと共通の等級体系)en.wikipedia.orgL3
政府は2018年に「ネパール・オーソドックス紅茶認証商標指令」を制定し、2020年9月23日、農業・牧畜開発大臣が申請42工場のうち基準を満たした12工場・協同組合(イラム9・テラトゥム2・サンクワサバ1)に商標証明書を交付したと報じられているkathmandupost.comL3
この商標制定以前、ネパールのオーソドックス紅茶は輸出時にインド・ダージリンのロゴを使って販売されており、独自商標はこれをやめる目的だったと報じられているkathmandupost.comL3
1863年、中国からもたらされた茶の種子をもとに、イラムに最初の茶園「イラム茶園」が開かれたとされるen.wikipedia.orgL3
ネパールは1951年まで対外的に孤立しており、茶産業はインドのようには発展せず、イラムの生葉の多くは国境を越えてダージリンの工場に売られ、ダージリン紅茶として扱われたとされるen.wikipedia.orgL3
政府は2000年に国家茶政策(National Tea Policy)を採択したとされるen.wikipedia.orgL3

百科

位置と地形

ネパールの茶産地は、東部のインド国境に近い丘陵地帯に広がる。政府は1982年、ジャパ・イラム・パンチタール・ダンクタ・テラトゥムの5県を「ティーゾーン」として公式に指定し、小規模農家の茶栽培を奨励した。5県のうちジャパは平地で、CTC製法の紅茶の主産地とされる。残るイラム・パンチタール・ダンクタ・テラトゥムは山地で、オーソドックス製法の紅茶が作られる。オーソドックス製法の茶は標高約900〜2,100m(3,000〜7,000フィート)の山地で栽培・製造されるとされ、イラム地区の茶園標高は1,370〜1,520m前後と紹介されることがあるが、この数値は日本語ECサイトの記述によるもので一次資料での確認はできていない。伝統的な5地区の外にも、カスキ・ドラカ・カブレ・シンドゥパルチョク・ボジプル・ソルクンブ・ヌワコットなどで茶栽培が広がっているとされる。

ダージリンとの地理的な関係

イラムはインドのダージリン・シッキムと国境を接する。イラムでは、ダージリンで茶産業が始まった約10年後の1863年に最初の茶園が開かれ、地理的な近接と気候の類似から、ダージリン茶に似た性質を持つとされる。ネパールは1951年まで対外的に孤立しており、茶産業はインドのようには発展しなかった。当時のイラムの生葉の多くは国境を越えてダージリンの工場に売られ、ダージリン紅茶として扱われたとされる。ネパールが独自の茶産地として認知されるようになったのは、後年のことになる。

歴史

1863年、中国からもたらされた茶の種子をもとに、イラムに最初の茶園「イラム茶園」が開かれたとされる。1865年にはソクティムに2番目の茶園が、1873年には最初の製茶工場が作られたとされる。1959年には最初の民間資本の茶園が開かれ、1966年には国営の製茶・茶園運営会社としてネパール茶開発公社(NTDC)が設立されたとされる。1978年にはイラムに最初の茶葉加工工場が設立され、1982年には前述の5地区が公式にティーゾーンとして指定された。1993年には政府委員会として国家茶コーヒー開発委員会(NTCDB)が設立されたとされるが、この年についてはNTCDBの公式サイト本文で確認できておらず、複数の第三者資料の記述に基づく。2000年には国家茶政策が採択され、2003年には共同マーケティング・輸出を担う業界団体ヒマラヤ紅茶生産者協同組合(HIMCOOP)が設立された。

生産と輸出の規模

生産量は1999-2000年度の5,085トンから、2016-17年度には約5倍の24,409トンに増加したと報じられている。同年度の内訳はCTC製法が18,547トン(76%)でジャパ地区のみで生産され、オーソドックス製法は5,862トン(24%)で、うちイラムが83.3%、パンチタールが8.6%、ダンクタが3.1%、テラトゥムが1.5%を占めたとされる。ヘクタール当たり収量はオーソドックス製法が334kg、CTC製法が1,598kgと、平地・多収量品種のCTCの方が高い。同年度、15,103戸の小規模農家が茶園面積の46%にあたる約12,956haで栽培し、国内生産の41%を占めたとされる。2006年時点では、オーソドックス紅茶を生産する小規模農家は約20,000人とされ、当時オーソドックス紅茶生産の70%を小規模農家が担っていたとされる。

政府統計を報道が引くところでは、2022-23年度のオーソドックス紅茶の輸出はインド向けが金額の大半を占め、第三国向けは11.4%にとどまったとされる。同年度、有機認証を受けたオーソドックス紅茶の輸出はインド向け523トン、第三国向け179トンで、第三国輸出に占める有機認証茶の比率は21.63%だったとされる。1kg当たり価格は国内価格941.60ルピー、国際市場価格801.51ルピーと報じられている。第三国向け輸出先には日本・中国・米国・フランス・ドイツ・デンマークが挙げられている。

品種と製法

オーソドックス製法には中国種(C. sinensis var. sinensis)が、CTC製法にはアッサム種(C. sinensis var. assamica)が主に使われるとされる。ダージリンと同様、山地の茶園は中国種の実生を基盤とすることが多いとされる。ダージリンで広く使われるクローナル品種AV2の名は、ネパールの一部の茶園の商品名にも現れるが、導入の経緯や比率までは確認できていない。オーソドックス製法は萎凋・揉捻・発酵・乾燥の工程を経る紅茶の製法で、CTC製法は茶葉を潰して丸める製法である。CTC製法の茶はネパール国内消費量の約95%を占めるとされ、これは国内消費に占める比率であり、全国生産量に占めるCTCの比率(76%)とは別の指標である。

規格と商標

ホールリーフの等級には、ダージリン・アッサムと共通のSFTGFOP1等の記号が使われる。等級記号は葉の大きさと芯芽(ティップ)の量を示す分類であって、味の格付けではない。政府は2018年に「ネパール・オーソドックス紅茶認証商標指令」を制定し、2020年9月23日、農業・牧畜開発大臣が申請42工場のうち基準を満たした12工場・協同組合(イラム9・テラトゥム2・サンクワサバ1)に商標証明書を交付したと報じられている。この商標制定以前、ネパールのオーソドックス紅茶は輸出時にインド・ダージリンのロゴを使って販売されており、独自商標はこれをやめる目的だったとされる。

収穫期

収穫はファーストフラッシュ(春摘み)、セカンドフラッシュ(夏摘み)、オータムナル(秋摘み)の順に行われるとされる。日本の店の商品名では「新茶」の語が使われることもあるが、これは本来日本茶の一番茶を指す語で、ネパール紅茶の商品名ではファーストフラッシュと同じ時期を指す転用として使われている。「サマー」をセカンドフラッシュとは別に使う店や、「冬摘み」と書く店もあるが、これらの語が指す具体的な収穫時期は店によって異なる可能性があり、はっきりしない。

典型として語られる香味

ネパールのセカンドフラッシュにダージリンのマスカテル香に通じる特徴が現れるとする記述がある一方、マスカテルフレーバーはダージリン紅茶にのみ現れる特別な香りだとする記述もあり、この点は資料によって記述が食い違う。産地ページでは個々のロットの香味を評価しないため、ここではこの食い違い自体を事実として記すにとどめる。

日本との関係

ネパールの茶の輸出先には日本が含まれると複数の資料に記されているが、対日輸出量や金額そのものの数値は確認できていない。日本紅茶協会の統計ページは紅茶の輸入データを国別PDFへのリンクとして提供しているが、本文にはネパールを含め国名を特定した数値は掲載されていない。財務省貿易統計では国別の紅茶輸入量を調べられるが、今回は確認していない。

買い方の手引き

商品名の読み方

商品名は「ネパール ダンクタ セカンドフラッシュ ○○茶園 2026年」のように、産地・地区・収穫期・茶園名・年が並ぶ店が多い一方、地区名を書かず茶園名やニックネームだけを掲げる店もあります。「カンチェンジュンガ」「サンダクプー」のような山名・地名がそのまま茶園名や銘柄名として使われることもあります。ロット記号や工場独自の記号(HRHT・HSP・HBOなど)が付く商品もありますが、正式名称は確認できていません。

オーソドックスとCTC

「オーソドックス」と明記された紅茶は、イラム・パンチタール・ダンクタ・テラトゥムなど山地の茶園で作られた、萎凋・揉捻・発酵・乾燥を経る製法で、日本の専門店で扱われるのはほぼこちらです。「CTC」は茶葉を潰して丸める製法で、平地のジャパ地区が主産地とされます。等級記号(SFTGFOP1等)はダージリン・アッサムと共通の体系で、葉の形状を示すもので味の格付けではありません。

収穫期

ファーストフラッシュ(春摘み)、セカンドフラッシュ(夏摘み)、オータムナル(秋摘み)の順で収穫され、商品名にはこの3つの表記が多く出ます。「新茶」と書く店もありますが、これは日本茶の一番茶を指す語の転用で、ファーストフラッシュと同じ時期を指します。「サマー」「冬摘み」と書く店もありますが、どの収穫期を指すかは店によって異なる可能性があります。

ダージリンとの見分け

イラムはダージリンと国境を接し、気候が近いため近い性質の紅茶が作られるとされます。かつてはダージリンの工場に生葉が売られ、ダージリン紅茶として扱われた歴史がありますが、現在は別の産地として扱います。商品名や等級記号の書式が共通するものも多いため、産地名の表記(ネパール/イラム等)で見分けます。

観測

コピチャ観測所が公開情報から機械収集した商品のうち、この項目に一致するもの。価格は在庫ありの行の最安 100g 換算。

茶種の内訳

紅茶110緑茶10白茶2烏龍茶1

観測した商品

133銘柄 / 11店 / 在庫あり 77 / 100g中央値 ¥4,000

ほか103銘柄。

関連の記事

ネパール紅茶入門 — ダージリンと国境を接する丘陵と「新茶」という商品名 →ネパールの紅茶は、平地ジャパのCTCと山地イラムなどのオーソドックスに分かれます。かつてダージリン紅茶として扱われた歴史、「新茶」という商品名の転用、収穫期と等級の違い、国内の棚の実測データを整理します。