スペシャルティコーヒーの豆袋には「ブルボン」「カトゥーラ」「ゲイシャ」といった言葉が書かれています。これは品種(バラエティ)——ワインでいうシャルドネやピノ・ノワールにあたる、味の土台を決める情報です。精製が「収穫後の加工」なら、品種は「そもそも何を育てたか」。この記事では、品種の全体地図を描きます。
まず大きな分類 — アラビカとロブスタ
コーヒーノキには大きく2つの種があります。
| アラビカ種 | ロブスタ種(カネフォラ) | |
|---|---|---|
| 世界の生産量 | 約6割 | 約4割 |
| 栽培環境 | 高地(800m〜)・冷涼 | 低地でも育つ・病気に強い |
| 味の傾向 | 酸味・香りが複雑 | 苦味が強く香りは単調 |
| カフェイン | 約1.2% | 約2.2%(ほぼ2倍) |
| 主な用途 | スペシャルティ・レギュラー | インスタント・ブレンド増量・エスプレッソ |
スペシャルティコーヒーの世界で「品種」という場合、ほぼすべてアラビカ種の中の栽培品種を指します。以下もアラビカの話です。
アラビカの二大源流 — ティピカとブルボン
現在栽培されるアラビカ品種の多くは、たった2つの系統にさかのぼります。
ティピカ は、エチオピアからイエメン、インド、ジャワ、中南米へと伝わった最古参の栽培系統。クリーンで上品な味わいですが、収量が少なく病気に弱いため、現在は希少になりつつあります。
ブルボン は、イエメンからインド洋のブルボン島(現レユニオン島)に持ち込まれて広がった系統。甘みとコクが豊かで、ティピカより2〜3割多く収穫できます。カトゥーラ(ブルボンの矮性変異)、パカス、SL28 など、重要品種の多くがブルボンの子どもたちです。
つまり豆袋の品種名は、「ティピカ系か、ブルボン系か、それ以外か」という目で見ると急に読みやすくなります。系統のつながりは品種図鑑で1品種ずつ親子リンク付きで辿れます。
覚えておきたい栽培品種 5 選
| 品種 | 系統 | ひとことで |
|---|---|---|
| ティピカ | 源流 | 上品・クリーン。原点の味 |
| ブルボン | 源流 | 甘みとコク。現代品種の親 |
| カトゥーラ | ブルボン変異 | 小型多収。中米の主力 |
| ゲイシャ | エチオピア系 | ジャスミンの香り。オークションの王者 |
| エチオピア在来種 | 未分類の総称 | イルガチェフェ等の個性の源泉 |
ゲイシャ は2004年のパナマ・エスメラルダ農園の「発見」以来、オークション価格の世界記録を更新し続けている特別な品種です。エチオピアのゲシャ村由来の系統で、紅茶やジャスミンを思わせる香りは一度飲むと忘れられません。
エチオピア在来種(エアルーム) は少し特殊で、単一の品種名ではなく「エチオピアの森や農園に自生する数千の未分類系統」の総称です。エチオピア イルガチェフェのフローラルな個性は、この遺伝的多様性に支えられています。
品種は「耐病性」の歴史でもある
品種の系譜には、味だけでなくさび病(コーヒーの葉を枯らす病気)との戦いが刻まれています。1970年代以降、さび病耐性を持つティモールハイブリッド(アラビカ×ロブスタの自然交雑)を親にした品種——コロンビアのカスティージョなど——が各国の国策として普及しました。「耐病性と味の両立」は、いまも品種開発の最前線のテーマです。
いま市場でどの品種が買えるのか
品種は知識で終わらせず、実際に飲み比べるのが一番です。kopi+cha の品種別取扱ボードでは、国内ロースターの販売情報を毎朝機械収集し、どの品種が・何銘柄・いくらで流通しているかを品種ごとに集計しています。各品種ページの「MARKET」欄から、いま買える銘柄に直接飛べます。
まとめ
- スペシャルティの品種はほぼすべてアラビカ種の栽培品種
- 多くの品種はティピカ系かブルボン系にさかのぼれる
- 味の個性(ゲイシャ・エチオピア在来種)と耐病性(カスティージョ等)が品種開発の二大テーマ
品種がわかると、豆袋のラベルが「産地×精製×品種」の3行で読めるようになります。次はぜひ、同じ産地で品種違いの豆を並べてみてください。