コーヒー豆のパッケージに書かれている「ウォッシュト」「ナチュラル」という言葉。これは精製(プロセス)——収穫したコーヒーチェリーから種子(=コーヒー豆)を取り出し、乾燥させるまでの方法を指します。同じ豆でも精製を変えると、成分の量やカッピングの点が変わると測られています(下の各節)。この記事では代表的な3つの精製方法を整理します。

そもそも精製とは何か

コーヒーの実(チェリー)は、外側から「果皮・果肉・ミューシレージ(粘液質)・パーチメント(内果皮)・生豆」という層になっています。この果肉やミューシレージをどの段階で・どうやって取り除くかが精製方法の違いです。

ウォッシュト(水洗式)

果肉を機械で除去したあと、水槽で発酵させてミューシレージを分解し、水で洗い流してから乾燥させる方法です。

  • 測られていること(酸): 同じ果実を 4 法で精製した浅煎りの豆の pH は、ウォッシュト 5.04、ナチュラル 5.04、アナエロビック 4.98 で、滴定酸度は 4 法で有意差がなかった(フローレス産アラビカ S-795)
  • 主な産地: コロンビア、グアテマラ、ケニア、エチオピア(水洗設備のある地域)
  • 測られていること(成分): ブラジルのアラビカ 17 品種・系統の生豆では、ウォッシュトは半乾式よりクロロゲン酸とトリゴネリンの含量が高かった

品評会に出るようなロットの多くはウォッシュトです。「その土地の実力」を知りたいときに選ぶと間違いがありません。

ナチュラル(乾燥式)

チェリーを果肉ごと天日で乾燥させ、乾いてから脱殻する、最も古い方法です。

  • 測られていること: 同一収穫のロブスタ 5 法を中煎りにした電子舌で、旨味の応答はナチュラルが 11.94 で最も大きかった(センサー応答)。同じ果実を 5 通りに分けてナチュラルにした SCA 形式のカッピングでは、無発酵の対照 82.15 点、CO2 で 24 時間発酵した区 86.90 点だった
  • 主な産地: エチオピア、ブラジル、イエメン
  • 注意点: 乾燥管理を誤ると発酵臭・欠点豆のリスクがウォッシュトより高いとされる

水をほとんど使わないため、水資源の乏しい産地で発達しました。近年は乾燥棚(アフリカンベッド)で管理されたナチュラルが増え、スペシャルティの世界でも主役級の存在です。

ハニープロセス(パルプドナチュラル)

果肉は除去するものの、ミューシレージをあえて残したまま乾燥させる中間的な方法です。残すミューシレージの量によって「ホワイト → イエロー → レッド → ブラック」と呼び分けられ、ブラックに近いほど残す量が多くなるとされます。

  • 測られていること: 同一収穫のロブスタの中煎りで、クエン酸はブラックハニー 13.85 mg/g がウォッシュト・ナチュラルより有意に高く、レッドハニー 12.43 mg/g はウォッシュトと有意差がなかった
  • 主な産地: コスタリカ、エルサルバドルなど中米

3つの精製の比較表

ウォッシュト ハニー ナチュラル
果肉除去 する する しない
ミューシレージ 洗い流す 残す 果肉ごと乾燥
測られていること 浅煎りの pH 5.04(フローレス産アラビカ)。電子舌の苦味・渋味の応答が 5 法で最大(ロブスタ) クエン酸はブラックで 13.85 mg/g(ロブスタ) 浅煎りの pH 5.04(フローレス産アラビカ)。電子舌の旨味の応答が 5 法で最大(ロブスタ)
使う水の量 多い 少ない ほぼ不要

まとめ — まずは飲み比べてみる

精製の違いは、知識として読むより同じ産地のウォッシュトとナチュラルを並べて飲むのが一番早く体感できます。エチオピア・イルガチェフェは両方の精製が流通している定番なので、飲み比べの入り口に向いています(産地の背景はエチオピアコーヒー入門へ)。

精製と並ぶもう一つの味の決定要因「品種」は、コーヒーの品種入門で整理しています。