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ウォッシュト
ウォッシュド / WASHED / 水洗式 / 水洗 / フリーウォッシュト / フルウォッシュト
果肉を機械で取り除き、粘液質を発酵と水洗いで落としてから乾燥させる精製。中米・コロンビア・ケニア・エチオピアの水洗処理場の豆の大半がこれ。日本の店では「ウォッシュド」「Washed」の表記が多く、観測所は「ウォッシュト」にまとめて集計する。
事実
| 事実 | 出典 | 階層 |
|---|---|---|
| 果肉除去のあと発酵槽に置く時間は 12〜72 時間が典型で、多くは 18〜24 時間。気温と水質、微生物相で変わる | cafeimports.com | L3 |
| 水を張らない「ドライ発酵」は 24 時間以内が典型で、まれに 72 時間まで | cafeimports.com | L3 |
| 乾燥前の段階で、ウォッシュトは果皮と粘液質(ミューシレージ)が取り除かれ、パーチメントと銀皮だけが残る | perfectdailygrind.com | L2 |
| 乾燥の目安は機械乾燥で 18〜36 時間、パティオやアフリカンベッドで 7〜15 日 | cafeimports.com | L3 |
| 脱穀(パーチメント除去)は水分 10〜12% で行うのが標準。ウェットハル(スマトラ式)は乾燥途中で外す点が違う | cafeimports.com | L3 |
| 生豆の水分は 9.5〜12.5% が典型。水分計の校正規格(ISO 6673 と ISO 1447)の違いで同じ豆でも 2 ポイント程度ずれる | sucafina.com | L3 |
| 従来の水洗はパーチメント 1kg あたり約 40 リットルの水を使う。コロンビアの研究機関 Cenicafé 系の節水設備 Ecomill では 0.3〜0.5 リットル | perfectdailygrind.com | L2 |
| エコパルパー(Penagos 等)は従来の水洗の 10 分の 1 未満の水で処理できる | royalcoffee.com | L3 |
| ダブルウォッシュト(ケニア式)は通常のウォッシュトの後にもう一度清水に浸ける工程を足したもの。ケニアの標準で、ブルンジ・ルワンダでも一般的 | perfectdailygrind.com | L2 |
| セミウォッシュトは水を使うパルパーで果肉を落とすが発酵・洗浄の工程を持たず、粘液質を残して乾燥する。パルプドナチュラル・ハニーと同系で、ハニーの色名(白・黄・赤・黒)に標準の定義は無い | royalcoffee.com | L3 |
| ケニアでは小規模農家の多くが農協(FCS)に属し、農協が「ファクトリー」と呼ぶ水洗処理場を運営する(例えば Tekangu 農協は Tegu・Karogoto・Ngunguru の 3 工場を持つ) | nordicapproach.no | L3 |
| エチオピアではイルガチェフェが 1970 年代から水洗式を採り入れた最初期の地域のひとつ。典型的なステーションは周辺の数百軒の小規模農家と組む | trabocca.com | L3 |
| エチオピアのシダマは生産の約 60% がウォッシュト、イルガチェフェは大半がウォッシュトで一部ナチュラル(2019 年の解説) | perfectdailygrind.com | L2 |
| コスタリカでは 19 世紀(1800〜1870 年)に中央盆地でコーヒーが広がり、水力を使った水洗処理が中核だった | revistas.una.ac.cr | L1 |
| 水洗式の英語での最初の記録は 1789 年のフランス領サン=ドマング(現ハイチ)で、1830 年代にはセイロンに「西インド諸島式」として持ち込まれた(未確認。出典付きの科学ブログのみ) | curiousaboutcoffeescience.com | L4 |
百科
ウォッシュトとは何か
ウォッシュト(水洗式、washed)は、収穫したコーヒーチェリーから果肉を機械で取り除き、種子の周りに残る粘液質(ミューシレージ)を発酵と水洗いで落としてから乾燥させる精製方法です。果肉ごと乾かすナチュラル(乾燥式)に対して、「種子だけを乾かす」のがウォッシュトの本質で、そのために水と設備を必要とします。世界の高品質なアラビカの多くがこの方法で処理されており、中米・コロンビア・ケニア・エチオピアのウォッシングステーションの豆は、ほぼこの工程を経ています。
工程
- 選別(フローテーション): 収穫したチェリーを水槽に入れ、浮く未熟果や虫食い果を取り除きます。
- パルピング(果肉除去): パルパーと呼ばれる機械でチェリーの外皮と果肉を剥がします。この段階で種子はまだ粘液質に包まれた「パーチメント(内果皮)付き」の状態です。
- 発酵: パーチメント付きの種子を発酵槽に入れ、粘液質を微生物の働きで分解します。水を張らない「ドライ発酵」と、水に浸ける「ウェット発酵」があり、時間は気温によって 12〜72 時間、多くは 18〜24 時間ほど。発酵が進むと粘液質が緩み、指で擦るとざらついた手触りになります。
- 洗浄: 水路や水槽で粘液質を洗い流します。水路では比重の軽い豆が先に流れるため、ここでも選別が行われます。
- 乾燥: パーチメント付きのまま、コンクリートのパティオや高床の網(アフリカンベッド)、あるいは乾燥機で、水分が 10〜12% 程度になるまで乾かします。日数は天候によって 1〜2 週間、機械乾燥なら 1〜2 日。
- レスティングと脱穀: 乾燥後、パーチメント付きで一定期間休ませてから、輸出前に脱穀(ハリング)してパーチメントを外し、生豆になります。
日本の店で「ウォッシュト G1」「ウォッシュト SHB」と書かれる豆は、この工程を経て輸出等級に選別されたものです。
派生と類語
- フリーウォッシュト(fully washed): 発酵と水洗いを両方行う標準的なウォッシュト。単に「ウォッシュト」と書かれる場合、多くはこれを指します。
- ダブルウォッシュト/ケニア式: 発酵と洗浄を二度繰り返す方法。ケニアで広く行われ、「ケニア式」と呼ばれることもあります。
- エコパルパー(デミューシレージャー)方式: 機械で粘液質を擦り落とし、発酵工程を省く方法。水の使用量が少なく、中米やブラジルで普及しています。発酵を経ないため「メカニカルウォッシュト」と区別して書かれることもあります。
- セミウォッシュト: 粘液質を一部残して乾燥させる方法で、ハニーやパルプドナチュラルに近い領域を指すことが多く、店によって意味が揺れる言葉です。
- スマトラ式(ウェットハル、ギリンバサ): インドネシアのスマトラで行われる方法で、乾燥の途中でパーチメントを剥ぎ、裸の生豆で乾燥を仕上げます。ウォッシュトの一種として説明されることもありますが、工程も味の傾向も別物として扱われます。
水と環境
ウォッシュトは果肉と粘液質を洗い流すため、従来の方法ではパーチメント 1kg あたり 40 リットルほどの水を使い、排水には糖分と酸が多く含まれます。近年は水を循環させる設備や排水処理槽、コロンビアの研究機関が開発した節水型の設備(パーチメント 1kg あたり 0.3〜0.5 リットル)、エコパルパー(従来の 10 分の 1 未満の水)による節水が広まっています。「ウォッシングステーション」という言葉は、エチオピア・ルワンダ・ブルンジのように小規模農家がチェリーを持ち寄る共同処理場を指し、ロットの名前になっています。
歴史と地域差
水洗式の記録は 18 世紀末のカリブ海の植民地にさかのぼり、19 世紀にはセイロンで「西インド諸島式」と呼ばれていました。中米ではコスタリカが 19 世紀に水力を使った水洗処理を中核に据え、コロンビアや中米各国に広まりました。ケニアでは小規模農家が農協に属し、農協が「ファクトリー」と呼ぶ水洗処理場を運営する形が定着しています。エチオピアではイルガチェフェが 1970 年代から水洗式を採り入れた最初期の地域のひとつで、いまではシダマの生産の 6 割ほどがウォッシュトとされます。一方、乾燥した気候で水が乏しいブラジルやエチオピアのハラー、イエメンでは乾燥式が続いてきました。精製方法の分布は、味の好みより先に、水・気候・インフラの条件で決まってきたと言えます。
味について一般に語られること
ウォッシュトは果肉由来の糖や発酵の影響が少ないため、産地や品種の特徴が「クリーンに」出る精製として説明されます。酸の輪郭がはっきりし、香りは花や柑橘、紅茶のような表現で語られることが多く、ナチュラルの果実感や発酵感と対比されます。これは精製方法の一般的な傾向であり、個々の豆の評価ではありません。同じステーションのウォッシュトとナチュラルを飲み比べると、この違いが分かりやすく出ます。
買い方の手引き
商品名での書かれ方
日本の店では「ウォッシュド」が最も多く、「Washed」「ウォッシュ」(後ろに ト/ド が付かない)、「ウォッシュト」「フリーウォッシュト」「フルウォッシュト」「水洗」の順に混在します。観測所はこれらを「ウォッシュト」にまとめて集計しています。「ダブルウォッシュト」「ケニア式」「エコパルパー」も広い意味のウォッシュトとして扱っています。
書かれていないときの手がかり
精製が商品名に無い場合、ケニア・コロンビア・グアテマラ・コスタリカなど中米の豆は、特に断りが無ければウォッシュトであることがほとんどです。ブラジル・イエメン・エチオピアのハラーはナチュラルが標準です。エチオピアのイルガチェフェとグジは両方が作られているため、書かれていなければ店に確認してください。
「発酵」表記との混同
「アナエロビック」「カーボニックマセレーション」など発酵の方法を示す語は、ウォッシュトにもナチュラルにも付くことがあります。「アナエロビック ウォッシュト」なら、密閉発酵の後に水洗いした豆です。観測所では発酵法が明記された豆を「アナエロビック」として別に集計しており、精製の欄がウォッシュトでも発酵法の欄が付いていることがあります。
生豆で見るとき
ウォッシュトの生豆は、銀皮(シルバースキン)が残りやすく、青緑色で色が揃って見えます。ナチュラルの生豆は黄色みを帯び、銀皮が少ないのが一般的です。生豆価格ボードの規格(G1・SHB・AA など)は、精製と組み合わせて店をまたいで比較できます。
観測
コピチャ観測所が公開情報から機械収集した商品のうち、この項目に一致するもの。価格は在庫ありの行の最安 100g 換算。
ほか571銘柄。
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