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アナエロビック

ANAEROBIC / 嫌気性発酵

密閉タンクで酸素を抜いて意図的に行う発酵。ワイン醸造由来の概念で、2015年の世界バリスタチャンピオンシップで注目を集めた。ナチュラル・ウォッシュト双方と組み合わされる。

事実

事実出典階層
アナエロビックは、酸素の無い環境(密閉容器・タンク)で意図的に行う発酵を指す。backyardbeans.comL3
密閉タンクはCO2の発生で内部が加圧され、一方向弁で余剰の圧力・酸素を逃す構造になっているroyalny.comL3
通常のウォッシュト発酵(12〜36時間が典型)より発酵期間が明確に長く、数時間から数日に及ぶことがあるdailycoffeenews.comL3
密閉・低酸素の環境は開放発酵と異なる微生物相(乳酸菌など)を優占させ、乳酸などの酸を生むroyalny.comL3
「カーボニックマセレーション」という語はワイン醸造から借用された概念とされる。dailycoffeenews.comL3
コファーメント(co-fermentation)は発酵槽に果肉・果汁・カカオパルプ等の外部の基質や選抜した酵母を加える手法で、乾燥前の加工段階で加える点が、焙煎後に香りを吹き付けるフレーバーコーヒーとは異なるroyalcoffee.comL3
2015年、オーストラリアのSasa Sesticが世界バリスタチャンピオンシップ(シアトル開催)で優勝し、嫌気発酵・カーボニックマセレーション処理のコーヒーを使った構成が注目されたことが、この分野が業界内で広がるきっかけの一つになったとされるsprudge.comL3
Sesticはキャンベラを拠点とするOna Coffeeのグリーンバイヤーで、2003年のPaul Bassett以来2人目のオーストラリア人世界バリスタチャンピオンだったsprudge.comL3
好気発酵と異なる乳酸菌優位の発酵になるため、トロピカル・ワインのような強い香味が典型として語られることが多いが、過度に進むとアルコール臭等の欠点にもなるとされる。thebasicbarista.comL3
サーマルショック(thermal shock)は発酵中・発酵後に温水と冷水を行き来させ急激な温度変化を与え、特定の香味成分を残す、または抑える手法として語られる。buddhabeanscoffee.comL3
アナエロビック発酵は、果肉を除去した生豆をパーチメントごと密閉した無酸素環境のタンクに入れて発酵させる方法と定義される。dailycoffeenews.comL3
密閉タンク内でCO2は酸素より重いため酸素を上部へ押し上げ弁から排出させ、最終的にCO2だけが残ると嫌気状態になる。mtpak.coffeeL1
アナエロビックナチュラルは、密閉タンクでの嫌気発酵を経た果肉付きの豆をナチュラルとして乾燥させる精製方法である。klatchcoffee.comL3
ラクティック(プロセス)は、乳酸菌(LAB)の働きを意図的に強めるか、LABを添加して行う嫌気発酵である。perfectdailygrind.comL3
密閉槽を使う自己誘導嫌気発酵は、蓋のエアロックで発酵で生じた CO2 を外へ逃がし、空気が入らないようにして無酸素の環境を保つ。pmc.ncbi.nlm.nih.govL2
密閉槽では、酸素が消費され CO2 がたまって無酸素の環境になるまで発酵の開始が遅れ、乳酸菌はその後の 96 時間ごろに増えたと解釈されている。pmc.ncbi.nlm.nih.govL2
ICAFE の解説では、アナエロビックは果肉を除きミューシレージを全て残した豆を気密タンクに入れて酸素を遮断し、管理して発酵させる処理とされる。icafe.crL2
室温 20.1±0.6℃の部屋での実験で、密閉槽(SIAF)の発酵塊は室温より 0.5〜3.7℃高く、開放槽は 5.1〜17.6℃高かった。pmc.ncbi.nlm.nih.govL2
密閉槽の自己誘導嫌気発酵を 24・48・72 時間で比べた実験では、発酵を延ばすほど 3-オクタノール・酢酸エチル・酢酸アミルの生成が増えた。pmc.ncbi.nlm.nih.govL2
同じ試験で、官能の SCA 点は密閉槽(SIAF)と開放槽(半嫌気)で有意に変わらなかった(p=0.5740)。pmc.ncbi.nlm.nih.govL2
シトラス・ベリー系の記述子は全果実の開放槽(半嫌気)の発酵で目立ち、黄色い果実・マンゴー・パイナップル・桃の記述子は密閉槽(SIAF)で頻度が高かった。pmc.ncbi.nlm.nih.govL2
開放槽(半嫌気)と密閉槽(SIAF)の発酵で、pH の差は 48 時間まで有意で、密閉槽の側が酸性が弱かった。酢酸菌 Acetobacter は開放槽で多かった。pmc.ncbi.nlm.nih.govL2
ナチュラル用の果実を CO2 で置換した槽で 24 時間発酵した区は、スクロースの微生物による消費が 48 時間(空気)・60 時間(CO2)の区より遅かった。doi.orgL2
同じ果実を 5 通りに分けてナチュラルにした試験の最終点は、無発酵の対照 82.15、空気 24 時間 84.70、48 時間 85.10、CO2 24 時間 86.90、60 時間 86.50。doi.orgL2
ナチュラル用の果実を CO2 で置換して発酵した区はクロロゲン酸量が保たれる傾向があり、最も低かったのは空気で 24 時間・48 時間発酵した区だったが、発酵による有意差は無かった。doi.orgL2

百科

アナエロビックとは何か

アナエロビック(嫌気性発酵)は、酸素の無い環境(密閉容器・タンク)で意図的に行う発酵です。伝統的な精製(ウォッシュトの発酵槽、ナチュラルの乾燥中の自然発酵)が結果として起きるのに対し、アナエロビックは温度・時間・酸素を管理して発酵そのものを設計する点が違います。用語自体はワイン醸造から借用された概念です。

工程

完熟したチェリー、または果肉を落とした豆を密閉タンクに入れます。タンクは一方向弁付きの容器で、発酵によって発生するCO2が内部を加圧し、CO2は酸素より重いためタンク上部に酸素を押し上げ、弁から排出させます。最終的にCO2だけが残ると嫌気状態になります。この密閉・低酸素の環境は、開放発酵と異なる微生物相(乳酸菌など)を優占させ、乳酸などの酸を生みます。発酵期間は、通常のウォッシュト発酵(12〜36時間が典型)より明確に長く、数時間から数日に及ぶことがあります。

派生と類語

  • アナエロビックナチュラル: 密閉タンクで嫌気発酵させたあと、果肉を落とさずナチュラルとして乾燥させる組み合わせ。商品名でも最も多く使われる複合語です。
  • アナエロビックウォッシュト: 嫌気発酵させたあと、通常どおり洗浄しパーチメントの状態で乾燥させる組み合わせです。
  • ラクティック(プロセス): 発酵中に乳酸菌の働きを意図的に強めた、または乳酸菌を添加した発酵として語られます。
  • サーマルショック: 発酵中・発酵後に温水と冷水を行き来させ急激な温度変化を与え、特定の香味成分を残す、または抑える手法です。
  • コファーメント(co-fermentation): 発酵槽に果肉・果汁・カカオパルプ等の外部の基質や選抜した酵母を加える手法で、乾燥前の加工段階で加える点が、焙煎後に香りを吹き付けるフレーバーコーヒーとは異なります。

歴史

2015年、オーストラリアのSasa Sesticが世界バリスタチャンピオンシップ(シアトル開催)で優勝しました。Sesticはキャンベラを拠点とするOna Coffeeのグリーンバイヤーで、2003年のPaul Bassett以来2人目のオーストラリア人世界バリスタチャンピオンでした。この優勝で嫌気発酵・カーボニックマセレーション処理のコーヒーを使った構成が注目され、この分野が業界内で広がるきっかけの一つになったとされます。

味について測られていること

同じ果実を 5 通りに分けてナチュラルにした SCA 形式のカッピングでは、無発酵の対照が 82.15 点、CO2 で 24 時間発酵した区が 86.90 点、60 時間が 86.50 点、空気で 24 時間が 84.70 点、48 時間が 85.10 点だった(対照と他の 4 区の差は有意、p<0.05)。密閉槽を使う自己誘導嫌気発酵を 24・48・72 時間で比べた実験では、発酵を延ばすほど 3-オクタノール・酢酸エチル・酢酸アミルの生成が増えた。コロンビアのウォッシュトを 192 時間まで自然発酵させた試験では、密閉槽(SIAF)と開放槽(半嫌気)で SCA 点は有意に変わらなかった(p=0.5740)。フローレス産アラビカの同じ果実を 4 法で精製した浅煎りの pH は、アナエロビック 4.98、ウォッシュト 5.04、ナチュラル 5.04 だった。発酵が過度に進むとアルコール臭等の欠点にもなるとされる。

買い方の手引き

商品名での書かれ方

「アナエロビック」(カナ)と「Anaerobic」(英字)がほぼ同数で使われ、その多くが「アナエロビックナチュラル」「アナエロビックウォッシュ(ウォッシュト)」のように乾燥方法とセットの複合語で書かれます。発酵時間を「62時間」「7Days」のように具体的に明示する店もあり、これは他の精製語にあまり見られないアナエロビック特有の表記です。

書かれていないときの手がかり

アナエロビックは伝統的な精製の延長にある付加的な手法で、産地からの推定はできません。商品名や説明に「嫌気」「密閉タンク」「発酵時間」といった語が無ければ、通常の精製(ウォッシュト・ナチュラル・ハニー)として扱われます。

アナエロビックとカーボニックマセレーションの見分け

どちらも密閉タンクで酸素を抜く点は共通で、カーボニックマセレーションはチェリーを潰さず粒のまま入れる点に特徴があります。商品名に「カーボニックマセレーション」「CM」と明記されていればそちらに分類され、単に「アナエロビック」「嫌気性発酵」とだけ書かれている場合はチェリーの状態が明示されないため、観測所ではアナエロビックとして集計します。

ボードへの導線

焙煎豆は焙煎豆相場ボードで精製をアナエロビックに絞って店ごとの価格を見られます。生豆は生豆価格ボードで産地×規格ごとに比較できます。

観測

コピチャ観測所が公開情報から機械収集した商品のうち、この項目に一致するもの。価格は在庫ありの行の最安 100g 換算。

170銘柄 / 19店 / 在庫あり 40 / 100g中央値 ¥1,847

Gluck Coffee Spotブラジル BRAZIL Fazenda Rio Brilhante¥1,050 /100g在庫あり2026-10-24
PHILOCOFFEAエチオピア 451 Ethiopia Gera G1 Anaerobic¥1,285 /100g在庫あり2026-10-24
Gluck Coffee Spotブラジル BRAZIL Fazenda Rio Brilhante¥1,300 /100g在庫あり2026-10-24
Trunk Coffeeコロンビア Colombia - EL PARAISO LYCHEE¥2,080 /100g在庫あり2026-10-24

ほか140銘柄。

関連の記事

発酵系精製の読み方 — アナエロビック・カーボニックマセレーション・酵母添加は何が違うのか →コーヒーの精製はもともと発酵を含む工程です。近年の「発酵系」はそれを密閉タンクで意図的に制御する手法で、アナエロビック・カーボニックマセレーション・酵母添加・果肉戻しの違い、味の当たり外れ、淹れ方の注意、価格の実態を国内店の観測データから整理します。