「ブラジル No.2 17/18」「ブラジル ショコラ」——ブラジルのコーヒーは、国名がそのまま棚に並ぶ点ではインドネシアに似ていますが、その後に続く語がまったく違います。産地名でも品種名でもなく、欠点数と粒の大きさを示す規格語、あるいは商社のブランド名が続くのがブラジルの棚の特徴です。この記事では、ミナスジェライス州を軸にした産地の位置関係、「No.2 17/18」という規格の中身、乾式(ナチュラル)とパルプドナチュラルという精製の違いを一枚の地図として整理し、国内の棚の実測につなげます。

ブラジルはどういう産地か

まず輪郭を3つ。

  1. 世界の供給量の約3分の1を占める、生産量首位の産地です。百科事典の記述では150年にわたり生産量で世界の首位にあるとされます。米国農務省(USDA)の2026年6月の年次報告(BR2026-0025)では、2026/27年度の生産予測は60kg換算で7,190万袋(前年比+14.1%)、うちアラビカ4,750万袋(+25%)、ロブスタ・コニロン2,440万袋とされました。同じ年のブラジル政府側の推計はCONABが6,670万袋、IBGEが6,510万袋とUSDA報告に併記されています
  2. ミナスジェライス州が栽培面積の約5割、アラビカの7割超を占めます。州別の栽培面積はミナスジェライス州122万haが最も広く、エスピリトサント州43.3万ha、サンパウロ州21.6万ha、バイーア州17.1万haと続きます。USDAの同じ報告ではアラビカの7割超がミナスジェライス州産とされ、2026年の収穫は同州で栽培面積+5%・単収+20%・生産量+26%(対2025年)と見込まれました
  3. 収穫のほぼ全量が乾式(ナチュラル)で、収穫自体も機械かストリップピッキング(枝ごとしごき落とす)が中心です。中米に多い選択摘みとは対照的で、広い農地を活かした栽培方法が精製の主流とも結びついています

地図で読む産地 — ミナスジェライス州が主戦場

日本の店の商品名によく出てくる地域名は、次のようにミナスジェライス州とその周辺に集まっています。

地域名(商品名に出る語) 位置・特徴
ミナスジェライス セラード(セラード・ミネイロ) 州北西部の55市町村からなる高原地帯。2005年に産地表示、2013年にブラジルのコーヒーとして初めて原産地呼称(DO)を取得。DOの要件は区域内すべての市町村が標高800m以上、アラビカ種限定、カッピング80点以上。平坦な地形で、地域の収穫の半数超が機械で行われるとされる
ミナスジェライス スル・デ・ミナス 州南部
ミナスジェライス カルモ・デ・ミナス 州南部の小地域で、農園単位のロットで扱われることが多い
ミナスジェライス マタス・デ・ミナス 州東部。パルプドナチュラルの主産地のひとつとされる資料があるが未確認
サンパウロ モジアナ 州側の高原地帯
バイーア バイーア 北東部の州
エスピリトサント エスピリトサント ロブスタ(コニロン)の主産地で、州内生産の約8割をロブスタが占めるとされる
(港名) サントス サンパウロ州の輸出港の名前だが、規格語として銘柄名にそのまま残っている

セラード・ミネイロは、パトロシニオ(IBGE統計でブラジル国内の市町村別生産量首位、生産672,000袋・コーヒー農地29,000ha)とモンテカルメロ(同2位)が中心です。地域全体で約255,000haのコーヒー農地、生産者数は約4,500人、ブラジル全体の生産量の12.7%を占め、平均生産量は年600万袋(60kg換算)とされます。認定はブラジル国立工業所有権院(INPI)が行い、生産者はセラード生産者連合に加盟する9協同組合または6団体のいずれかの組合員である必要があります。

「サントス」は産地ではなく港の名前

「ブラジル サントス No.2 17/18」という表記でつまずくのがここです。サントスはサンパウロ州の輸出港の名前で、産地でも地域でもありません。かつて内陸の産地の豆がすべてサントス港から積み出されていた名残で、規格語として銘柄名に残っています。日本の棚では、地域名(セラード・モジアナ等)より商社や農園のブランド名が銘柄名に多く現れる点も、コロンビアなど他の産地との違いです。2026-09-13時点の商品名では「ショコラ」が49件・14店、「ダテーラ」が9件・4店、「モンテアレグレ」が6件・5店で、地域名の「セラード」(6件・4店)を上回ります。

名前のつまずき — 「No.2 17/18」は産地でも品種でもない

ブラジルの規格を定めるのは農務省(MAPA)の規則(Instrução Normativa nº 8/2003、2002年の旧規則を廃止して制定)です。この規則は生豆の分類を、種(アラビカ/ロブスタ)・粒形とスクリーンサイズ・香味系統・カップ品質・色・欠点数による等級(TIPO)という6つの軸に分け、それぞれが独立の基準に基づくと明記しています。つまり**「No.2」と「17/18」は別々の軸の値**です。

  • No.2(欠点数の等級=TIPO): 届いたロットから最低10%の袋を無作為抽出し均質化した、生豆300gの作業サンプル中の欠点点数で決まります。黒豆1粒・発酵豆2粒・貝殻豆3粒・未熟豆5粒・砕け豆5粒がそれぞれ1点というように欠点の種類ごとに換算し、合計点数がTipo2は4点まで、Tipo3は12点まで、Tipo4は26点まで、Tipo5は46点まで、Tipo6は86点まで、Tipo7は160点まで、Tipo8は360点まで、それを超えると規格外(Fora de Tipo)です。Tipo1という等級はこの規則のどこにも定義されていません。「ブラジルにNo.1がほとんど出回らない」のは商慣行の欠如ではなく、制度そのものにTipo1の枠が無いためです
  • 17/18(スクリーン=粒の大きさ): 同じ規則は粒の形を、扁平な通常のアラビカの形(Chato)と卵形でピーベリーにあたる形(Moca)に分け、Chatoはふるいで大=19/18/17・中=16/15・小=14以下に分類します。「17/18」はこの大サイズの帯に含まれる表記です。業界の解説(2015年)では「スクリーンサイズと品質の間に前提とされる関係は無い」とされており、粒が小さいロットが大きいロットより劣るとは限りません
  • 商社の規格名はここにカップ品質の区分(Strictly Soft・Fine Cupなど)を加えた「NY2/Scr17-18/Fine Cup」の3要素で示されることが多いとされますが、この3要素の呼び方自体は業者の商品ページの記述で、未確認です

つまり「ブラジル No.2 17/18」は、欠点数・粒の大きさ・(ときにカップ品質)という規格を積み重ねた表記であり、産地でも品種でもありません。同じ棚にある「セラード ○○農園 イエローブルボン」という商品名と比べると、前者は規格の情報だけで産地・農園・品種の情報を持たず、後者はその逆であることが分かります。No.2の用語ページ17/18の用語ページに、それぞれの軸の詳細をまとめています。

精製で読む — 乾式とパルプドナチュラル

ブラジルの精製はパルプドナチュラル・ナチュラル・ウォッシュト(少数)の3種に大別されます。乾燥はほぼ全量が乾式(ナチュラル)で、通常8〜10日、条件が悪いと4週間かかるとされ、荷姿は60kg袋です。広い平坦な農地でストリップピッキングや機械収穫が行われ、収穫量の多さと天日乾燥のしやすさが結びついています。

パルプドナチュラルは、果皮だけを除去してミューシレージ(果肉)をほぼ残したまま乾燥させる、ウォッシュトナチュラルの中間の工程で、ブラジル発祥とされます。現地名はセレージャ・デスカスカーダ(Cereja Descascada、略してCD)で、1990年代にブラジルで広まったとされますが、成立年は資料によって「1950年代からある」「1980〜90年代に普及」など幅があり、確定できていません。ブラジルコーヒー院(IBC)が1990年に解体され市場が自由化されたことが普及を後押ししたとする説もありますが、これも未確認です。

精製 主に誰が 商品名での書かれ方(2026-09-13時点)
ナチュラル(乾式) ほぼ全量。小規模農家・大規模農園の双方 「ナチュラル」と書かれる。商品名にこの語を含むのは84件・17店
パルプドナチュラル 主にミナスジェライス州(マタス・デ・ミナス等) 「パルプドナチュラル」「PN」「N/PN」(ナチュラルと併記)と書かれる。32件・6店
ウォッシュト 少数派 「ウォッシュド」と書かれる。書いてある時点でブラジルとしては標準と違う処理

ブラジルの精製を読むときは、まずナチュラルとパルプドナチュラルの違いが手がかりになります。商品名に精製が書かれていなければ、店の商品説明も確認してください。逆に「ウォッシュド」と書いてあれば、ブラジルでは少数派の処理を選んで書いている合図です。

品種で読む — ブルボン・ムンドノーボ・カトゥアイ

一般的な栽培品種として、ブルボン(イエローブルボンを含む)・カティモール・カトゥアイ・カツーラ・マラゴジッペ・ティピカが挙げられます。ブルボンは1700年代初頭にイエメンからブルボン島(レユニオン)へ渡った系統で、カツーラ・カトゥアイムンドノーボの祖にあたります。

ムンドノーボはブルボンとティピカの自然交雑種で、1943年にサンパウロ州ミネイロス・ド・チエテで発見され、IAC(カンピーナス農業研究所)が1943〜52年に選抜、1952年から配布されました。カトゥアイはIACがムンドノーボとカツーラを1949年に交配した系統(系統名H-2077)で、1972年にブラジルで商業公開された赤実・黄実の2系統です。日本の商品名では、こうした品種名より商社ブランド名や農園名が前面に出る傾向があり、ブルボンムンドノーボカツーラマラゴジッペティピカは用語ページ単位で見ないと見えてきません。

国内の棚の実態 — 観測データから

コピチャ観測所が観測する国内の店と楽天市場の出品者のうち、産地がブラジルのコーヒー(ブレンドを除く)は420銘柄・59店でした(2026-09-13時点)。内訳は生豆272、焙煎豆77、生豆卸の焙煎サービス等71。焙煎豆の100g換算の中央値は¥1,018(43件)、生豆は¥368(116件)です。精製が判明した銘柄はナチュラル52・パルプドナチュラル33・ハニー28・ウォッシュト8・アナエロビック5で、残りの294件は精製が商品名から判別できません。

見出し語(題名照合) 銘柄 生豆 焙煎豆 焙煎豆の中央値/100g 生豆の中央値/100g
ブルボン 102 12 71 3 ¥702 ¥362
ナチュラル 84 17 50 23 ¥784 ¥334
No.2 51 22 43 8 ¥980 ¥340
サントス 27 13 23 4 ¥1,690 ¥298
パルプドナチュラル 32 6 23 1 ¥1,032 ¥321
17/18 20 10 18 1 ¥648 ¥291
ミナス 17 5 14 0 ¥267
モジアナ 7 4 4 2 ¥712 ¥297
セラード 6 4 6 0 ¥435
カトゥアイ 2 2 0 2 ¥832
スルデミナス 3 1 2 0
バイーア 2 1 2 0
ムンドノーボ・エスピリトサント・マタスデミナス 0 0 0 0

(100g換算は在庫のある行の最安値。中央値は5件未満のときは出していません。語は題名で照合しているので、1銘柄が複数の行に数えられます。420件のうち上の見出し語のどれにも当たらない銘柄が195件あります)

読み取れることが3つあります。

  1. ブルボンが銘柄数で最多(102件)ですが、扱う店は12店に集中しています。品種名を前面に出すのは、農園ロットを扱う一部の店の傾向です
  2. 規格語(No.2・17/18・サントス)は店の広がりが大きい。No.2は22店、サントスは13店が扱い、生豆卸から自家焙煎向けの小売まで横断しています
  3. セラードは地域名としては目立たない。産地の話題としては大きい地域ですが、商品名に「セラード」と単独で書かれるのは6件・4店にとどまり、地域名より規格語・ブランド名が先に立つ産地であることが数字にも表れています

焙煎度が商品名に書かれている焙煎豆の内訳は、不明56・中煎り8・深煎り6・中深煎り4・浅煎り3で、焙煎度を明示しない店が大半です。焙煎豆の相場は焙煎豆相場ボード(ブラジル絞り込み)で日ごとの分布が見られます。生豆は生豆価格ボードで、産地×規格の単位で店をまたいで比較できます。

買うときの目安

  • まず1袋なら「ブラジル No.2」の中煎り〜中深煎り。規格語だけの商品はどの店にもある基本の1本で、ナッツやチョコレートを思わせる甘さと低めの酸、しっかりしたボディという、産地の傾向として語られる香味の輪郭がいちばん出やすい組み合わせです
  • 精製で選ぶなら、パルプドナチュラルとナチュラルを飲み比べる。同じ農園の商品でこの2つが並ぶ店もあり、パルプドナチュラルの用語ページにある「ウォッシュトより甘さ・ボディが出る、中間的な傾向」を確かめる材料になります
  • 農園ロットで選ぶなら、規格語より農園名・品種名を手がかりにする。「セラード ○○農園 イエローブルボン」のような商品名は、規格語だけの商品より産地・農園・品種の情報量が多く、生豆価格ボードの比較対象にはなりません(規格の無い単一農園ロットは比較しないため)
  • 規格語で店をまたいで比べるなら、生豆価格ボードを使う。「No.2」「17/18」は店をまたいで名寄せできる数少ない共通言語です

まとめ — ブラジルの選び方3ステップ

  1. 州で位置を掴む: 中心はミナスジェライス州(セラード・スル・デ・ミナス・カルモ・デ・ミナス)。サンパウロ州側はモジアナ、エスピリトサント州はロブスタ、サントスは産地でなく港の名前
  2. 規格を分解する: 「No.2」は欠点数、「17/18」は粒の大きさ。別々の軸が1行に畳まれているだけで、産地でも品種でもない
  3. 精製と品種で輪郭を掴む: 主流はナチュラルとパルプドナチュラルの 2 つ。パルプドナチュラルはブラジル発の中間工程で、商品名に精製が無ければ店の説明で確かめる。品種はブルボン・ムンドノーボ・カトゥアイが中心だが、商品名では商社ブランド名や農園名の陰に隠れやすい

規格語がここまで前面に出る産地は他に無く、「ブラジル No.2 17/18」の中身が分かると、同じ規格語の下にどれだけ違う農園・品種のロットが並んでいるかが見えてきます。